足りないよ、白山くん。


保健室のベッドで休んでいると酷かった頭痛はだんだん治ってきて。

ふと水野さんのことが気になった。


あんなとこ、怪我するような場所じゃないよね。

首に縦長い傷があったのを鮮明に覚えている。


…リスカっぽいような。


いやでもあんなに真面目で優等生で、クラスの男女共に好かれている完璧な人がそんなことするわけ…

ないと信じたい。


どうせ気づいてもらえなさそうだった体調についてもにも、気づいてくれた水野さんがリスカなんて…


でも俺には過去にそういう人を見てきた経験があったから、気にしないではいられなかった。

それから俺は少しずつ水野さんのことを気にかけるようになった。



休み時間も寝てるふりをして、となりの席から聞こえてくる話に耳を傾ける。

でもどの話も他愛のない友達との話で、特に傷に関係のある話は出てこなかった。