長い沈黙の後、琉愛は私と向き合った。
「いろいろ話してくれてありがとう。あと、さっきからその電話…」
そう指摘されて思い出した。
私は真白とずっと通話をしていたんだ。
きっとこの通話の先で、真白だけでなくみんなが聞いていると思う。
私はスマホを耳に当てた。
「ごめんなさい、あなた達には直接言う勇気がなかったの。通話でごめんなさいね」
私は臆病だから。
だから、顔を見て話すことはできなかった。
そうして通話を切ろうとすると、瑠璃華のあせったような声が聞こえた。
私はタップしようとした指を止める。
『あのねっ…斗亜くんがそっちに向かってて…』
瑠璃華が言い終わる前に、病室のドアが勢いよく開いた。
入ってきたのは——真白。
息を切らした彼は私の腕をつかみ、病室から出ていく。
部屋を出る時、琉愛に視線を向けるとにこっと笑って手を振っていた。
私はそのまま連れられるがまま、病院の外まで出て道を歩いていく。
真白はずっと無言。
表情すら見えないから、なにを考えているか全くわからない。
強くにぎられた手を見ると、どうしてもなにも言えなくなる。
それから突き当たりを曲がってすぐの家へと入っていった。
その家が真白の家であることは、言われなくったってわかる。
普段寮生活でほとんど使わないであろう家は、全く生活感のない空っぽの家。
広いこともあって、さらに寂しさを感じさせた。
今真白と一緒に入ったのはおそらく彼の部屋。
本棚と勉強机、ベッドのみの空間。
それから、やっと真白は口を開いた。
「てきとうに座って。あと、ごめん。いきなり連れてきて」
その表情は——無表情。
なんの感情も読み取れない、その表情にゾクッとした。
「大丈夫よ。それで?どうしてここに連れてきたの?」
その感情を読み取られないように冷静を装った。
それから、真白がベッドに座る。
隣をポンとしたのを見て、座ってという意味だと読み取って私はそこに座った。
少しの沈黙の後、真白が口を開いた。
「雨晴が消えちゃうんじゃないかって。怖くなった」
「…消えないわよ。私はそんなに弱くな——」
「そうじゃない。そうじゃないよ…」
私の言葉を遮ってそう言った。
そして、真白はぽつりぽつりと話し出した。
「雨晴は覚えてないと思うけど、僕達小さい頃に会ってるんだよ」
「え…?私と真白が?」
私は信じられないと言った目で真白を見つめた。
相変わらず無表情だけど、目の奥は懐かしむように私を映していた。
「僕がマフィアに捕まっちゃった時があってさ。その時助けに来てくれたのが雨晴と来夢ツキだった」
私はすぐに記憶をたどった。
ツキと任務に出たのは数えられるほどしかない。
その中で一般人を助けたなんてレアケース、すぐに見つかる。
そうして私はひとつの記憶にたどり着いた。
「貴方もしかして…10年前に会った?」
「覚えてるの?」
「…忘れるわけないわ」
私は貴方の、その時の笑顔に救われた。
今までずっと親の道具として、ファミリーのトップでいるために人を殺してきた。
意味なんて全く見出せなかった。
ひとつあるとすれば、姉弟と楽しく過ごせるように。
そんな時あの任務で貴方に会った。
正直一般人と関わるのは初めてだったし、見られたら殺すという暗黙のルールもあったし近づこうとは思わない存在。
けれど、貴方は笑ってくれた。
助けてくれてありがとうと言って笑った貴方に、初めてマフィアという仕事の本当の意味を見つけられた気がしたの。
だから、忘れるわけがない。
「いろいろ話してくれてありがとう。あと、さっきからその電話…」
そう指摘されて思い出した。
私は真白とずっと通話をしていたんだ。
きっとこの通話の先で、真白だけでなくみんなが聞いていると思う。
私はスマホを耳に当てた。
「ごめんなさい、あなた達には直接言う勇気がなかったの。通話でごめんなさいね」
私は臆病だから。
だから、顔を見て話すことはできなかった。
そうして通話を切ろうとすると、瑠璃華のあせったような声が聞こえた。
私はタップしようとした指を止める。
『あのねっ…斗亜くんがそっちに向かってて…』
瑠璃華が言い終わる前に、病室のドアが勢いよく開いた。
入ってきたのは——真白。
息を切らした彼は私の腕をつかみ、病室から出ていく。
部屋を出る時、琉愛に視線を向けるとにこっと笑って手を振っていた。
私はそのまま連れられるがまま、病院の外まで出て道を歩いていく。
真白はずっと無言。
表情すら見えないから、なにを考えているか全くわからない。
強くにぎられた手を見ると、どうしてもなにも言えなくなる。
それから突き当たりを曲がってすぐの家へと入っていった。
その家が真白の家であることは、言われなくったってわかる。
普段寮生活でほとんど使わないであろう家は、全く生活感のない空っぽの家。
広いこともあって、さらに寂しさを感じさせた。
今真白と一緒に入ったのはおそらく彼の部屋。
本棚と勉強机、ベッドのみの空間。
それから、やっと真白は口を開いた。
「てきとうに座って。あと、ごめん。いきなり連れてきて」
その表情は——無表情。
なんの感情も読み取れない、その表情にゾクッとした。
「大丈夫よ。それで?どうしてここに連れてきたの?」
その感情を読み取られないように冷静を装った。
それから、真白がベッドに座る。
隣をポンとしたのを見て、座ってという意味だと読み取って私はそこに座った。
少しの沈黙の後、真白が口を開いた。
「雨晴が消えちゃうんじゃないかって。怖くなった」
「…消えないわよ。私はそんなに弱くな——」
「そうじゃない。そうじゃないよ…」
私の言葉を遮ってそう言った。
そして、真白はぽつりぽつりと話し出した。
「雨晴は覚えてないと思うけど、僕達小さい頃に会ってるんだよ」
「え…?私と真白が?」
私は信じられないと言った目で真白を見つめた。
相変わらず無表情だけど、目の奥は懐かしむように私を映していた。
「僕がマフィアに捕まっちゃった時があってさ。その時助けに来てくれたのが雨晴と来夢ツキだった」
私はすぐに記憶をたどった。
ツキと任務に出たのは数えられるほどしかない。
その中で一般人を助けたなんてレアケース、すぐに見つかる。
そうして私はひとつの記憶にたどり着いた。
「貴方もしかして…10年前に会った?」
「覚えてるの?」
「…忘れるわけないわ」
私は貴方の、その時の笑顔に救われた。
今までずっと親の道具として、ファミリーのトップでいるために人を殺してきた。
意味なんて全く見出せなかった。
ひとつあるとすれば、姉弟と楽しく過ごせるように。
そんな時あの任務で貴方に会った。
正直一般人と関わるのは初めてだったし、見られたら殺すという暗黙のルールもあったし近づこうとは思わない存在。
けれど、貴方は笑ってくれた。
助けてくれてありがとうと言って笑った貴方に、初めてマフィアという仕事の本当の意味を見つけられた気がしたの。
だから、忘れるわけがない。


