「じゃあ、彼を待たせてるんで」
「またね~」
「待った。これは引越しの足しにしなさい」
「荷物になるんでいりません」
私の持ってきた袋を持たせようと前に出した元父親を即答で一刀両断。そしてしっかりと桃の入った紙袋だけを持ち、その場を離れた。「頑固なところはそっくりですね」という女性の笑い声は聞かなかった事にして、湊さんの座る席に急いだ。
私に気付いた湊さんは、笑顔で迎えてくれる。
「桃、貰ったのであとで一緒に食べませんか?」
「へぇ、桃か」
「はい。上等ものだと思います」
「そうか、それは楽しみだな」
うん、こんなに上等なものもらってもいいのかとも思ったけれど、もらったのだからありがたくいただこう。と、考えている時だった。
「で、結婚式は俺としてくれるんだよな?」
危うく、吹くところだった。いや、こことあの席だいぶ離れてるのに……まさか、地獄耳?
結婚式なんてよく私の口から出たなとまで思ってたのに……は、恥ずかしい……
「……気が早すぎます」
「そうか? 別に早くないだろ。それに、瑠奈のウェディングドレス姿、結構見たい」
……そんな真面目な顔で言わないでほしい。
でも、そういえば警察官って結婚式じゃタキシードじゃなくて制服なんじゃなかったっけ。……うん、見たいかも。
……じゃなくて。まだ早い、早すぎるって。
「そんなに俺と結婚したくない?」
「……その言い方はずるいじゃないですか」
「それだけ瑠奈が好きなんだけど。瑠奈は俺のこと好き?」
……こういうところでさらっと言わないでほしい。
「……大好き、ですけど」
「ははっ、そのむくれっ面は?」
「……」
こんな事を面と向かって言うだなんて、しかもこんなところでだなんて恥ずかしいにもほどがある。
――嘘から始まった私達の関係。
今までの3ヶ月間。ずっと、嘘をついてしまっているという気持ちで苦しかった。湊さんの周りはとてもいい人達ばかりだったから、余計苦しかった。
湊さんへの気持ちも、この関係は3ヶ月で終わるのだからと蓋をしてきた。
けれど、そんな事はもうしなくていい。
苦難は待っていると分かっているけれど、湊さんと一緒なら怖いものはないよね。
しいていえば、真紀ちゃんにどう報告すればいいか、くらい?
END.



