イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 ……けど。


「あの、湊さん、恥ずかしいのですが」

「離してほしい?」

「はい」


 あっさりと、解いてくれた。向こうにいらっしゃる警察官さん達の方へ視線は向けられないけれど、これ以上恥ずかしい思いはしたくない。

 事情聴取はもう遅い時間だからと明日に持ち越すこととなった。

 そして、私はというと……


「はぁ、せっかく知り合いに警察いるんだからさっさと相談しろよ。自分で何とかしようとでも思ったか? それが一番危険なんだよ。だから、危ないと思ったらさっさと俺に連絡しろ」

「……」

「瑠奈」

「……すみませんでした」


 運転中の湊さんに説教をされてしまった。とはいえ、ストーカーなんて今日が初めてだし……

 でも、もし私が気付かなかっただけでストーカーされていたとしたら? と考えると、恐ろしいな。うん、ちゃんと連絡しよう。……と、言いたいところではあるけれど、でも相手は警視さん。ずっと忙しい方でもあるし……

 そう考えていたら、ちょうど赤信号の時に隣から伸びてきた手が私の頭の上に乗った。


「無事でよかったよ」

「っ……」


 すぐに、顔が火照ってしまった。外が真っ暗だから気付かれないかもしれないけれど、バレてしまったら何か言われてしまうのでは……?


「……はぁ、こうなるんだったら全部放り投げて意地でもお前の家に行くべきだったな……」


 けれど、ため息の後に出てきた言葉。私の家? 意地でも?

 いや、でも、ちょっと待って。全部、放り投げていいの? あの、警視さん……?


「お前、その顔ヤバいぞ」

「……」


 暗がりで分からないかもしれないと思っていたけれど、そういえばとっても明るいコンビニ内で会ったな。

 アルバイト先とか琳にも言われたけど、そんなに……?

 自分で鏡を見た時は、そんなに違和感はなかった、というかちゃんと鏡は見なかったけど。速攻で髪整えるくらい。

 ……そんなに、酷い?


「まぁ、そうなる可能性もあると思っていたが、ここまで来るとはな……これは、手間取った俺が悪いな」

「え?」

「電話にも出ないし、メッセージは他人行儀で業務連絡かとツッコミたくなるほどで腹が立ったんだからな? ったく、電話するのが遅すぎるだろ。頼れって言ったの、忘れたか?」

「……すみません、でした……」

「はぁ……」


 うん、まぁ、自覚はある。だって、彼は忙しい人でもあるし……あの母親と元父親の再婚相手と会った時の件を思い出すと連絡したくなくなってしまった。

 彼は警察官だし、とても優しい人だから、そういう態度を取ってくれるのだろうけれど……一体何を思ってしまっただろうか。

 それを思うと、怖い。怖かった。