母がいなくなった。それは、別に悲しい事ではない。だから、現実に戻るのは難しい事ではなかった。
それよりも、今どうしても必要なお金を計算しないといけない。そして、アルバイトでこれから入ることが確定されている収入も一緒に把握しないと。
けれど、現実はそう甘くない事もちゃんと分っている。何度も計算したところで、足りない金額が変わる事もないのだから。
さて、どうしたものか。大学の講義を受ける前でもスマホにはアルバイト募集の表示が映されていた。そして、それに気が付いたのは私の隣に座ってきた琳だ。
「えっ、またバイト増やすの!?」
「そうだけど」
「えぇ……大丈夫? だって、居酒屋のバイトに、コンビニもだし、あとは……」
だいぶ問い詰められてしまい、仕方なく話すことになってしまった。
貴方にだけは知られたくなかったけれど、仕方ない。まだ言っていない私の母親の事は薄々気が付いているように見えるし、アルバイトも詰め込んでるからだいぶ心配させてしまっているから……やらかした。
「借金って、大丈夫なの?」
「……まぁ、頑張る」
「……」
大学で一人だった時に声をかけてくれて今では親友の琳には、嘘を吐けないな。
はぁ、あのクソババアが何とも素敵な借金をプレゼントしてくれちゃったおかげで迷惑極まりない。しかもあのババアに引き抜かれていたのか通帳の中もすっからかん。幸いバイトの給料日前だったからよかったものの、大変なことになるところだった。
これから光熱費などの支払いだってあるのに……あぁ、先が思いやられる。
「あの、さ」
と、私の顔色を見つつも改まった様子でそう言ってくる彼女を不思議がりつつも「何?」と答えると、とんでもないことが口から出てきた。
「もし、今すぐにでもお金が必要なら、いいバイト教えてあげよっか」
「いいバイト?」
「三時間で50万、ホテルレストランのディナー付き」
「……パパ活?」



