この恋は妄想じゃありません

「私も王子様を見てみたいわ」



翌日。朝、8時。屋上。



9時から始まる林田さんとの特訓のために私は1人でこっそり練習をしていた。



「うーんこうかな」



悩みながらセリフを読んでいると、



「王子様ならここにいるけど」



と屋上に誰かが入ってきた。



この声は顔を見ずとも分かる。



「瀬名くん」



相変わらずの不良っぽい見た目をしている。



「なんか久しぶりだね、なんでいるの?」



瀬名くんと顔を合わせるのは映画館デートぶりだ。



「補習あるから来たら屋上に莉紗先輩いるの見えた」



わざわざ会いに来てくれてありがとうございません。



「先輩は何してんの?」



眠そうに目をかきながら一応聞いてみましたと言う感じだ。



「演劇の練習」


「え、何役?」


「シンデレラ」


「絶対見に行く」


「来なくていいです」



こんな下手なシンデレラ、瀬名くんが見たら絶対笑う。