いきたい僕ら

驚いて振り向けば、白黒の世界の一部かと思うような真っ黒の服を着た男が立っていた。

男は僕の前に立つと話し始めた。

「僕たちみたいな『神話』に関わった人間は生きてはいられない。なぜなら求めてしまうからだよ。」

「求める……?」

「そう。知識や技術、力をね。死に方はいろいろあるよ?単純に発狂して舌を噛み切る。実験が失敗して爆発エンド。探索の途中に足を滑らせて落下。他にも……。」

「おい。」

僕は、楽しそうに話を続ける神を睨みつけた。

「何が言いたいんだ?」

神は少し考えて、やっぱり楽しそうに言った。

「君が賢いってことだよ。」

意味がわからない。

「人智を超えた力に目が眩むことなく、現実を受け止める強さを持っている。本当は逃げ出したいのに。」

神は後ろを向き、そこに扉を作った。

「さて、これ以上僕たちと関わりを持つのは君も本意ではないはずだ。だけど僕は願いを叶えないと君から離れられない。さぁ、君は何を願う?」

……みんなを救うには、何を願えばいい?

「……『イーグルサイト』と、それに関わることの記憶や記録を、みんなから消して。」

この記憶がなくなれば、こんな神を調べることなんてないだろう。

それなら、破滅の未来は防げる。

「その『みんな』の中に君はいるのかい?」

「……入れなくていいよ。僕が八神を殺した。その責任はちゃんと取るつもりだ。」

「イーグルサイト」がなくなれば、自動的に八神の最期を知る人もいなくなるだろう。

だから、殺してしまった者の勤めとして、僕だけは忘れない。

忘れてはいけない。

「めんどくさいねー人間って。」

本当にめんどくさそうに言った。

「まぁいいか。分かったよ。君は任務中に刺されたことになるだろう。代償は……そうだな。今回はいいや!」

「は?!」

どんな代償を払わせられるかと内心ビクビクしてたのに、なし?!

「僕は気まぐれだからね。君のことが気に入ったから、代償はいらない。それともなに?何かリクエストあった?」

僕は全力で首を横に振った。

「そっか。じゃ、サクッと終わらせますか。」

そう言うと、神は扉を開けた。

「この先、何が起きても僕を呼ばないで済むといいね。」

「え?」

悲しそうにボソッとそう言って、帰っていった。