いきたい僕ら

「律樹さん、起きてください。ご飯ですよ。」

そんな声で、僕は目を覚ました。

近くに梨杜さんの姿はなかった。

「ごめん……どのくらい寝てた?」

自力で起きあがろうとして、脇腹がやっぱり痛くて諦めた。

「……1人でできないことは言ってくださいよ……。それと寝てたのは3時間くらいですね。」

テキパキと用意しながらレンは答えた。

この様子を見るに、僕が寝てる間もずっと世話をしてくれていたんだろう。

「レン、ありがと。」

レンは一瞬時が止まったかのようにポカンとしたあと、笑いながら言った。

「……なんですかいきなり。気持ち悪いですよ。」

「なっ……」

感謝を伝えただけの怪我人にこの言い種。

一体どんな教育を受けてきたことやら……。

……まともな教育は受けてなかったな。

「俺はやりたくてやってるだけです。それに律樹さんいないとなんか落ち着かないし……。」

レンが目を逸らしてそう言う。

今度は僕がポカンとする番だった。

「……それって僕がいないと寂しいってこと?」

からかいながら言うと、レンは怒ったようだった。

「さっ……!そんなんじゃないですよ!逆です逆。俺がいないと、律樹さんが寂しいんでしょ?!」

思わず口をついて出た、といった感じだった。

……残念ながらそうなんだよなぁ。

「僕は怖がりだからね。」

あの時から僕は、また何かを失うのが怖くてたまらない。

レンが死にかけて、それを自覚した。

「レンが死にかけてね、初めて、自分以外の誰かに殺意を持った。……怖かった。何も考えられなくなって、全部ぐちゃぐちゃになって、レンをあんなにしたヤツを全員殺そうと思った。ほんと、危ない考えしてるよ、僕。」

人を「殺そう」と思う感情が、あんなに怖いものだなんて、初めて知った。

理性がとんだ人間の恐ろしさも知った。

それが自分だなんて、思いたくなかった。

「……あれですか?激オモ彼氏ってやつですか?」

ニヤニヤしながら聞いてくる。

「あはは……」

その通り過ぎて何も言えねぇ。

レンは真面目な顔に戻って言った。

「でも、それで自分まで殺そうとしちゃダメですよ。自分が頑張ればとか、自分が死ねばとか、それで満足するのは律樹さんだけなんで、いい加減その自己犠牲精神やめてくださいね。」

「……そうだね。だからさ。」

僕はベッドを降りて立ち上がり、レンの前に立った。

お腹は痛いけど、少しなら我慢できる。

「蓮斗。こんな頼りない上司だけど、これからもついてきてくれるか?」

レンはその場に膝をついて言った。

「……御意。」

静かな時間が流れていった。