いきたい僕ら

……そんな生活、ずっと夢見てたよ。

でも僕には無理なんだ。

「普通」に戻るまでが長すぎた。

もう……みんなと同じ場所には戻れない。

許されないんだ……。

「……姉さん、さようなら。」

僕は姉さんの首を絞めた。

「ぁぐ……り、つ……?」

何か武器があれば苦しませずに逝かせられるのに……。

そこで僕は気づいた。

「……姉さん、『りつ』って、だれ……?」

さらに強く、首を絞める。

涙が姉さんに落ち続けた。

……気づいた時には姉さんは動かなくなっていた。

人の首を絞めた生々しい感覚が気持ち悪かった。

涙はもう止まっていた。

姉さんの呼吸を止め、それをそのままに立ち上がってリビングに向かう。

母さんは夕飯の準備をしていて、いつの間にか帰ってきていた父さんが食卓で夕刊を読んでいた。

……あぁ、こっちも夢じゃないか。

「あら律樹。遅かったわね。」

「樹楽はどうした?」

母さんと父さんがそれぞれ言う。

「……殺した。」

僕はペン立てに入っていたハサミを取り出しながら答える。

ただのハサミだけど、使いようによっては簡単に人を殺せる。

日常のほとんどのものがそうだ。

それで殴ったり、刺したりするだけで、人は簡単に死ぬんだ。

この6年間で嫌というほど思い知った。

「ころっ……!律樹、冗談でもそんなこと言うんじゃない!」

父さんが新聞を置いて怒鳴る。

……ニセモノのくせに。

「冗談……?」

僕はまず、鍋をかき混ぜている母さんに近づいた。

「……?律樹?」

「これが、冗談なわけ……ないじゃないか!」

そして背中にハサミを突き立てた。

「僕だって『普通』の子供になりたかった!」

肉を貫くグロテスクな感触を感じ、母さんの体から力が抜けた。

「律樹!?何してるんだ!!」

体からハサミを抜いて、再び刺す。

また、涙が溢れてきた。

「僕を『普通』じゃなくしたのはみんなじゃないか!」

何度も、何度も、何度も……背中が原型を留めなくなるまで。

「僕だけ……僕だけおいてったくせに!!」

父親がやってきて、僕を張り倒すまで。

僕を床に叩きつけた父親は、母親の肩を揺らした。

「実樹!おいっ!実樹!!」

僕は立ち上がり、流しに置いてあった包丁を手に取る。

叩きつけられた衝撃でハサミが飛んでいってしまったからだ。

「なのに今さら、『普通』になんてなれっこない!!」

僕は後ろから父親の首を切った。

勢いよく血が噴き出す。

「もう、戻れないんだよ……。」

父親は驚いた顔のまま母親に覆い被さるようにして倒れた。

……全部終わり。