いきたい僕ら

……徐々に意識がはっきりしていくのを感じる。

それに従い目を開く。

僕は知らない場所で寝ていた。

……いや「知らない」と言うのは語弊があるな。

僕は僕がいるはずのない場所で、寝ていた。

「律樹、起きた?」

突然聞こえた声に、僕は驚いて振り向いた。

「っ……かあ、さん……?なんで……。」

そこには死んだはずの母親がいた。

僕は元いた家のリビングのソファに寝ていて、キッチンでは母親が料理をしていて、その横では姉さんが手伝いをしていて……。

幸せな、幸せだった記憶が、そこにはあった。

「なんでって何よ。私がここにいちゃ悪い?」

母さんは普通に話をしている。

「だって……死んだ、はずだ……。母さんも、父さんも……姉さんも……。」

「はあ?りつ、何寝ぼけたこと言ってんの?」

姉さんも、普通に話している。

……いや普通じゃない。

でも僕はそんなことにも気付けなかった。

「誰も死んでないよ。変なこと言わないでよね。」

……変なこと?

そんなはずない。

だって僕は見てたんだから。

突っ込んでくるトラックも、それに潰される父さんと母さんも、姉さんから流れ出る血液も……。

「また変なこと考えてたんでしょ?それより律樹、お風呂洗ってきて。」

「わ、わかった……。」

なんなんだ、これは。

みんな……みんな死んだはずなのに、生きてる。

生きて、普通に会話してた。

夢か?僕の夢がついにこんなことをやり始めたのか?

僕は自分の頬をつねってみた。

「いった……」

自分でやったことだけど、思い切りやりすぎた。

……でもこれではっきりした。

これは夢じゃない。

母さんも姉さんも生きていて、多分父さんも生きているこの世界こそが、現実なのだ。

じゃあ、今まで過ごしていたのは?

あれが夢なの?

それは……そんなことがあったら、僕はどうすれば……。

あの痛みも、悲しみも、苦しみも。

偽物だって言われたら僕は……。

「りつー、まだー?」

姉さんの声が聞こえた。

「早くしないと、ご飯でき……ってどうしたの?気分悪い?」

すぐ近くにいるはずなのに、ものすごく遠くで話しているようだった。

「りつ、大丈夫?」

「っはぁ……はぁ……」

……別によくないか?

「はは……」

あれが偽物なら、いいじゃないか。

「ちょっとりつ?何があったの?」

何も起こらなかった。

何事もなく全てが終わって、子供のまま生きていけて、いいじゃないか。

「あはは……」

僕は笑った。

泣きながら、笑っていた。

「ねぇりつ、ほんとにどうしたの?」

だって、笑うしかないじゃん。

6年だよ?

もうすぐ7年になる。

それだけ生きてきた人生が、全部嘘だって言われたら、誰だって頭おかしくなるよ。

そりゃ嬉しいけど。

家族がみんな生きてて、朝陽を縛り付けることもなくて、普通の幸せを得て。

もしそれが許されるなら、嬉しいけど!