いきたい僕ら

八神は僕が来たことに気付いたはずだが、無視してレンに手を伸ばした。

「レンから離れろ!」

僕がそいつにタックルするよりも早く、誰かがレンに伸びたそいつの腕を切り落とした。

「よぉ八神。久しぶりだなぁ?」

いつの間にか僕と八神の間に入り、刀を構えたガタイのいい男がそう言った。

口調は軽いが、その身から出る空気は重苦しくて、動くことも声を出すこともできなかった。

八神はゆっくりと僕たちの……龍星さんの方を向いて口を開いた。

「お久しぶりです。龍星。」

相変わらず、感情の読めない声だった。

斬られた手からは勢いよく血液が噴き出しているが、気にした様子はない。

それは壁や床、ベッド、そしてレンにまで降りかかった。

「思い出話でもしたいところだが、どうにも今はそんな余裕がなくてねぇ。……そいつ置いてとっとと失せろ。」

軽い調子から一転、地を這うような重い声になる。

しばらく睨み合いが続き、諦めたように八神が口を開いた。

「……そうですね。この状態であなたとやり合うほど、強くなったと自惚れるつもりはありません。……では。」

そう言うと、八神は一瞬で姿を消した。

窓から出ていったようだ。

それを見て、龍星さんから出ていた圧力も消えた。

「レン!」

僕はレンに駆け寄り、その体を抱き上げる。

腕の傷が開く感覚がしたが、どうでもよかった。

せいぜい梨杜さんにまた怒られるなって思ったくらいで。

「お、おい。俺が運ぶから。」

「大丈夫……です。」

龍星さんの申し出にそう返して、汚れていないベッドまで運び、そこに寝かせた。

軽く様子を見る。

目立った外傷はない、呼吸も穏やか。

特に何もされていないみたいだ。

「ふぅ……おわっ!」

一息ついたところで、腕を思いっきり引っ張られた。

「お前なぁ、無茶すんなよ。まだ子供なんだから。」

龍星さんは僕を椅子に座らせ呆れたように言った。

そして右腕の包帯を解いて、小声で「あーあ……」と言っていた。

……子供。

子供だったら、どんなに楽だっただろうね。

「……龍星さん。」

「なんだ?」

僕は丁寧に包帯を巻いてくれている龍星さんに声をかけた。

「子供じゃないです。僕は『始末屋』です。」

「っ……そうか。すまない。」

何で謝るのか、理由を聞く前に龍星さんが口を開いた。

「……よし、できた。お前はあいつらのところに戻れ。俺が見ててやるから。」

「はい。」

僕は龍星さんに礼をして医務室を出た。