いきたい僕ら

レンは梨杜さんや蒼さんのものと同じように、メモを取ろうとして携帯を見る。

そしてすぐに手を止めて、驚いたような、申し訳ないような顔になった。

「!……律樹さん、その日って……」

「ああ、なんだ。メモ取ってたんだ。」

だったら最初から素直に言っておけばよかった。

「……そうだよ。僕の家族の命日。全く、嫌な日に生まれたものだね。」

「……すいません……。」

……いや、生まれた日は関係ないか。

いくら日にちが違ったって、あの事故は「僕の誕生日」に起きるものだから。

「……ケーキ、食べましょ!生クリームが溶けちゃう。」

暗い雰囲気を断ち切るように、殊更に明るく、レンが言った。

「……そうだな。切り分けようか。蓮斗、どれだけ食べたい?」

梨杜さんがそう言ったとき、部屋の扉を誰かがノックした。

蒼さんが戻ってきたのか、と思ったけど、蒼さんだったら絶対にノックしないで入ってくる。

だから蒼さんではないことはわかった。

「あれ?来客予定はなかったはずだけど……。」

梨杜さんはそう言いながら扉を開ける。

そこにいたのは見覚えのない青年だった。

「聖藍、どうした?こんな時間に。また蒼が何かやらかしたのか?」

聖藍、と呼ばれた青年は苦笑しながら首を振り、梨杜さんだけに聞こえるように小声で何かを言った。

途端に梨杜さんの表情が変わり、僕たちの方を向いた。

「律樹、蓮斗。すまない。急用が入った。ケーキは持って帰って2人で食べな。」

そう言うと再び聖藍さんの方を向いた。

「聖藍、このあとお前暇か?」

「あとは龍星さんを呼ぶだけです。」

龍星さんは幹部の1人だ。

龍星さんも呼ぶってことは幹部が全員集まっての緊急会議でも入ったのか?

梨杜さんは聖藍さんの言葉を聞いて少し考えたあと、指示を飛ばした。

「……わかった。それは私が行こう。聖藍は2人を孤児院まで送ってくれないか?部屋はそのままでいいから。」

その言葉に聖藍さんは頷いたが、僕は抗議した。

「梨杜さん、送ってもらわなくても帰れますよ?あと、部屋は片付けます。」

梨杜さんはしばらく僕を見つめて、諦めたようにため息をつきながら言った。

「……はぁ、じゃあ片付けは頼むよ。でもちゃんと送ってもらえ。いいな?」

有無を言わさぬ口調で言い、返事を聞かずに出ていってしまった。

残されたのは僕とレンと聖藍さん……。