いきたい僕ら

レンにバレないように深呼吸をして、いつも通りの笑顔を作る。

「レン、気持ちは嬉しいけど、僕の誕生日は宗教上の理由で明かせないんだ。」

真っ赤な嘘である。

誕生日を言えない宗教なんて聞いたことないし、そもそも僕は宗教なんてやってない。

「へー、そうなんですね。で、いつなんですか?」

「……」

全く通じなかった。

レンは普段は聞き分けはいい方なのに、こういうときは意地でも譲らない。

聞き出すまで聞いてくるだろう。

「えーっと……実は僕、宇宙人で……」

「地球人も宇宙人ですもんね。で、いつなんですか?」

これもダメ。

何かを察して諦めてくれたら楽なんだけど、そんなことができるレンじゃない。

別に誕生日を知られることが問題なんじゃない。

それを祝われることが僕にとっては苦痛でしかないだけだ。

それを言えば間違いなく理由を聞いてくる。

理由を話すことは、僕の傷を素手で掘り返すのと同じだ。

せっかく良くなってきたのに。

梨杜さんにヘルプの視線を送ると、梨杜さんが楽しげに笑いながら口を開いた。

「蓮斗、私の誕生日は2月13日だよ。ついでに蒼の誕生日は7月30日。夏真っ盛りだね。」

レンはそれを聞いて、携帯のメモ帳に書いていった。

「へぇー梨杜さんって、冬生まれなんですね。」

僕も初めて知った。

まぁ、普通に生活してて上司の誕生日を聞くことなんて滅多にないだろう。

これで僕のことを忘れてくれればいいんだけど……。

そうはいかなかった。

「それで、律樹さんの誕生日は?俺正直なこと言うと律樹さんのが1番知りたいんですよ。」

必死に考える。

どうやったら誰も嫌な思いをせずにこの話を終わらせられるか。

……考えた結果、無理だと思った。

「……分かった。誕生日、教えるけど、でも絶対に祝わないで。それが約束できないなら教えられない。」

これだけは守ってもらわないと、僕は抑えが効かなくなるだろう。

僕自身のために、約束してもらう。

「えぇ?!なんでですか?祝えないんじゃ意味ないじゃないですか。」

レンは驚いて言った。

「……僕にわからないように何かやるんなら何してくれてもいいよ。でも僕に見える形ではやらないで。お願い。」

「でも律樹さん……」

レンが言いかけたところで、ずっと黙って聞いていた梨杜さんが口を開いた。

「蓮斗。律樹には律樹の事情があるんだ。分かってあげな。」

梨杜さんに言われると強くは出れないのか、レンは納得してない様子ではあるが引き下がった。

「……分かりました。律樹さん、絶対にお祝いしないんで、教えてください。」

「……10月7日だよ。とんでもない、厄日だ。」