いきたい僕ら

……落ち着いた頃に、梨杜さんが声をかけてきた。

「大丈夫か?」

僕は頷こうとして、首を横に振った。

今の僕は、お世辞にもまともと言える精神状態じゃなかった。

自分がまともじゃないと分かるくらいにしかまともじゃなかった。

「そうか。とりあえずここは出よう。歩けはするか?」

梨杜さんの問いかけに頷いて立ち上がる。

多少ふらふらとするが、自分で進むことはできた。

やってきたのは入り口付近の応接室だ。

中に入り、ソファに座る。

そこにはもう1人、別の人物がいたが、今の僕はそれに気づく余裕さえなかった。

梨杜さんは改めて聞いてきた。

「なぁ、律樹。ここで何があったんだ?嫌なことを思い出すような、何かがあったんだろう?」

僕は全部を話した。

あったこと、起きたこと、した会話。

覚えてる範囲で、全て話した。

「……神さま、僕にはいずれ神が必要だって言ってたんだ。ねぇ梨杜さん、これどういうこと?朝陽に、なにかあるってこと……?」

僕が願うことは朝陽のこと以外にあり得ないと思った。

……結局、今日僕がダメになったのはそれが原因だった。

朝陽に何かあるかもしれないと、不安になったんだ。

もうひとつあるとすれば、あの神の言葉が、僕の家族を馬鹿にしているように聞こえたこと……。

「律樹。きっと大丈夫だよ。お前の『朝陽』は強いんだろ?お前よりも、ずっとずっと、強いんだろ?」

僕は頷いた。

絶望の海に落ちていた僕を、掬い上げてくれた朝陽が、僕より弱いわけがなかった。

「じゃあ大丈夫だよ。十分強い律樹より強い彼が、律樹を悲しませることをするはずない。……な?」

梨杜さんは赤子をあやすように優しく言った。

僕はまた頷いた。

「……ありがとうございます、梨杜さん。だいぶ、よくなりました。」

そして僕は、もう1人の人物にやっと気付いた。

「レン……」