いきたい僕ら

「朝陽くん、」

「なぁ律樹。」

俺は何か言おうとした律樹の言葉を遮った。

悪いとは思ったけど、どうしても、我慢できなかった。

「くん付け、慣れない。呼び捨てにしてくれると嬉しいんだけど。」

「でも、朝陽くんの方が年上……」

あー、いるよね、そういうの無駄に気にするやつ。

「俺が頼んでるんだからいいの。ほら呼んでみ?」

俺がそう促すと、律樹は小声で言った。

「……朝陽……くん。」

「律樹?」

「……朝陽…………くん……」

「りーつーき?」

「……あーもう!朝陽!」

最後には諦めたようにそう呼んでくれた。

「よろしい。で、どうしたの?」

「なんで頭撫でるの?恥ずかしい……。」

そんなことを言いながら、律樹は俺の手をどかそうとはしない。

「……嫌?嫌ならやめるけど……」

俺がそう言って、律樹の頭から手を離すと、途端に寂しそうな顔になった。

律樹はあんまり喋らない割に、顔が正直すぎる。

俺がまた頭に手を乗せると嬉しそうな顔になって、それを何とか隠そうとして、律樹は1人で顔芸をしていた。

「……律樹、本当のこと言ってごらん?」

それが面白くて、俺はからかいながら、そう言った。

もちろん手は乗せたまま。

「……いやじゃ、ない……」

目を逸らして、律樹は続ける。

「……でも、恥ずかしい……子供扱い、されてるみたいで……やだ。」

その様子がとてもかわいくて、俺はまた頭を撫でた。

「……律樹、お前は子供だ。それに、ここには俺たちと母さんたちしかいない。母さんたちは見てないから、恥ずかしがることないよ?」

俺が笑顔でそう言うと、律樹は一瞬フリーズして、俺に抱きついてきた。

「……?」

声は押し殺しているようだったが、肩が震えていたから、泣いているのがわかった。

「朝陽ぃ……」

「よしよし、大丈夫だから。」

律樹が何で泣いているのか、俺はなんとなくわかった。

きっと安心したんだと思う。

誰か、他人に甘えることができて。

不器用な律樹のことだ。

家族に対しても、上手に自分の感情を表現できていなかったんだろう。

だから俺は、目一杯律樹を甘やかしてやることにした。

「俺にはそうやっていいんだからな。」

律樹の肩を抱き、優しく頭を撫でながら言うと、律樹は何度も頷いた。