いきたい僕ら

……「イーグルサイト」の実験室を見にいく日の前日。

僕とレンは、梨杜さんに呼ばれて本部に来ていた。

午前中は用事があったから、時刻は既に夕方だった。

いつものように梨杜さんの執務室に案内されるかと思ったら、今日はそうじゃなかった。

「律樹は蒼の部屋に行って。話したいことがあるみたいだから。蓮斗は私の部屋で待ってようか。」

エレベーターの中でそう言われ、僕は蒼さんの部屋の前にやってきた。

コンコンと、軽くノックをする。

返事はない。

もう一度ノックをして、今度は声をかけてみた。

「蒼さん、律樹です。梨杜さんに言われてきました。」

……。

やっぱり返事はない。

諦めて梨杜さんの部屋に行こうと振り向くと、そこに黄色と青のオッドアイの女性が立っていた。

「うわっ!」

全く気配がしなかった。

こんなに近くにいるのにわからないって、僕相当気を抜いてたのかな?

女性は僕と扉を見て少し不思議そうな顔をしたあと、ガチャリと無言で扉を開けた。

「あ、ちょ……え?いいんですか?」

僕が聞くと、頷いて答えてくれた。

部屋に入る女性に続いて、僕も中に入らせてもらう。

梨杜さんの部屋と特段変わるところはなく、整理整頓が行き届いていた。

蒼さんはパソコンの置いてある机に突っ伏すようにして寝ていた。

女性は蒼さんの肩を揺すり、声をかけた。

「蒼、お客さん。」

「……んえ?誰……?」

寝ぼけた調子で蒼さんは言う。

疲れているようで申し訳なかったが、どうすることもできないのでとりあえず名乗った。

「律樹です。梨杜さんに言われて来ました。」

「……あぁ、もう、そんな時間……?」

あくびをしながら言った。

こんなこと言うのはちょっとアレだけど、この人、幹部で大丈夫か?

「ちゃんと起きて。困ってる。」

女性が僕の様子を見て蒼さんに伝えてくれた。

「起きてる起きてる。……はい、もう大丈夫だから。ありがとね、羽澄。」

軽く伸びをしながら、蒼さんは羽澄と呼んだ女性に言った。

そして僕の方を見て、

「ごめん、ちょっと顔だけ洗ってきてもいい?」

と言った。

僕が頷くと蒼さんは、「そこ座ってて。」とソファを指さして言い、部屋の奥にある洗面所に向かった。

この会話をしている間に、羽澄さんはいなくなっていた。

やっぱり極端に気配が薄い人だ。

……羽澄さんって幹部の?!

滅多に人前に姿を見せないからわからなかった……。