いきたい僕ら

そんなつもりなかったのに、自然と涙が溢れてきた。

「……ごめん、なさい……」

あの日外に出るように言ったことか、今まで墓参りに来なかったことか。

「ごめんなさい……!」

犯罪者に成り下がったことか、それとも自分だけが生き残ったことか……。

何についての謝罪か自分でも分からなかった。

でもとにかく、謝らなければいけないと思った。

そして最後に、言わないといけないことがあった。

「ありがとう……。」

僕がこんなになってでも生きていられるのは、みんなが守ってくれたからです。

涙を拭いて立ち上がり、入口へと戻る。

「ありがとう、レン。」

「もういいんですか?」

レンは静かに言った。

「うん。帰ろっか。」

こうして僕たちは霊園をあとにした。

帰りの電車の中、外の景色を見ながらレンが躊躇いがちに口を開いた。

「……律樹さん、1個聞いてもいいですか?」

「なに?」

「律樹さんの家族って、どんな人だったんですか?」

……僕の家族か。

「俺の親、どっちもクズだったんで分からないんです。あんなに辛そうな顔してたのに、それでもこうやって墓参りにきた意味が。」

「僕、辛そうな顔してた?」

「そりゃもう。『絶対に行きたくない』って顔してましたよ。」

レンが冗談めかして言った。

「そっか……。」

自分では全然そんなことないと思ってたけど、人から見るとそう見えるんだ。

「……優しい人たちだったよ。」

清部会や孤児院では、家族の話はある意味タブーになっていた。

思い出したくない過去を背負ってやってくる人がほとんどだからだ。

だから僕がこっちにきて自分の家族について話したのは、6年過ごしてて1回だけ。

これで2回目だ。

父親はまっすぐで、母親は穏やかで、姉は……

「姉さんは、仲が良かった。あの時も、僕を守ってくれて……。」

「……」

レンは何も言わずに聞いていた。

家族との思い出が、浮かんでは消えていく。

楽しかったこと、嬉しかったこと、怒られたこと……。

そして最期の瞬間。

姉は僕に覆い被さって、衝撃を和らげてくれた。

僕たちは車の中にいたはずなのに、いつの間にか道路に横たわっていて。

少し向こうでは、両親が大型トラックの下敷きになっていて。

姉の脚は車の破片に貫かれていて、そこからはおびただしい量の血が流れていた。

流れてる血液は生ぬるいのに、僕を抱える姉の腕はどんどん冷たくなる。

「そうやって、僕を残して、みんな死んだよ。……どうしたの?」

気づけばレンは、怯えた表情で僕を見ていた。

今の話のどこに怖がる要素があったのか、僕には分からなかった。

こんな話、ありふれたものだろう?

もっと酷い経験をしてる人なんて、いっぱいいる。

それこそ、レンのほうが大変な思いをして、ここに来たんだろう。

家族に愛されていただけ、僕のほうがマシだ。

「……レン?」

「……律樹さんは……どうして、そんなに淡々と話せるんですか?」

「え……?」

淡々と……してるつもりはないけど。

「慣れた、っていうのと、あともうひとつ。」

僕は笑った。

「……僕にとっての1番は……家族じゃないから。」