いきたい僕ら

失礼します、と言って梨杜さんの執務室をあとにする。

エレベーターの中でレンに声をかけた。

「レン、場所の下見だけして帰ろう。あらかじめ逃げ道とかを確認しといたほうが安心だからね。」

「おっけーです!」

本部を出て、そのままの足で明日の指定場所に向かった。

……なるほど、罠は張り放題……。

指定された場所自体は木がなくて開けているけれど、その周りは鬱蒼とした森に囲まれている。

どこから逃げようとしても、足元や木の上からの奇襲に警戒しないといけない。

本部の裏手の森だから下手なことはしてこないと思うけど、気をつけるに越したことはないだろう。

「どう思う?」

僕はレンに尋ねた。

レンの専門の武器はナイフや毒針といった暗器だ。

こういうところはホームのはず。

「いきなり襲いかかってくる、なんてことはないと思います。でも警戒は解かない方がいいと思いますよ。ここ、確か清部会の私有地で、知ってる人は限られてるはずなのに向こうからここを指定してきたってことは、僕らのことを知ってる人間がいるかもしれません。」

その言葉を聞いて、引っかかっていたものが解決した。

ただの顔合わせに年齢なんて関係ないはずなのに、10代であることにこだわったこと。

実力のある上の役職の人じゃなくて、人に知られていないであろう下の役職の人を選んだこと。

梨杜さんたちは裏切り者の可能性を考えたんだ。

ちょうど僕たちの仕事も、裏切り者の始末だ。

他の組織は知らないが、清部会ではスパイ行為はもちろん、組織を抜けたいと自由に言うことさえ許されていない。

だからもし「イーグルサイト」の関係者に清部会の人間がいるのなら、捕らえて相応の罰を受けてもらわなければならない。

もちろん、偶然ここを見つけただけかもしれないから確かなことは言えないけど。

少なくとも、梨杜さんたち幹部は、裏切り者の可能性が高いと思っているらしい。

本人たちはそうは思っていないだろうけど、僕たちは体のいい捨て駒にされたわけか。

仕方ない、それが組織っていうものだ。

「……わかった。今日はこれで帰ろう。誰が関わっているにしても明日わかるよ。」

そうして僕たちは孤児院に帰った。