いきたい僕ら

梨杜さんも、全員分のお茶を用意してから蒼さんの隣に座った。

「あ、ありがとうございます。」

配られたお茶を飲み、ほっと一息ついたところで梨杜さんは話し始めた。

「それじゃ早速だけど、仕事の話をしてもいいか?」

「はい。」

いつも以上に改まって返事をすると、梨杜さんは少し笑った。

「そんなに畏まらなくてもいいだろ。蒼ほどになれとは言わないけど、2人とも私の弟みたいなもんだ、もっとゆるくいこうか。」

「そーそー、ゆるっといこ。」

「お前はもっと年上を敬え。」

「えー……」

そんな会話に僕とレンは顔を見合わせて、同時に笑った。

いつもは梨杜さんだけだから緊張しないんだけど、今日は蒼さんもいるから無意識に身構えていたらしい。

そんな様子を見た梨杜さんも、また笑った。

「よし、それじゃ本題。2人は、最近青少年を中心とした新しい組織ができたのを知っているか?」

梨杜さんの問いかけに、僕たちは揃って首を振った。

「そうか……まあ、知らなくても無理はない。かなり小規模の組織みたいだからな。名前は『イーグルサイト』。ちょうどお前たちくらいの少年少女を集めて、活動しているらしい。」

僕たちくらいってことは10代前半か、半ばくらいか。

「……それがどうかしたんですか?10代の非行は今時珍しいことじゃないし、僕たちのところまで情報が回っていないってことは、それほど力を持った組織じゃないんですよね?」

こういう仕事をしているとよくわかるけど、裏社会の情報はとにかく早い。

そしてかなり正確だ。

道を歩いていれば、いろんなところから様々な情報が入ってくる。

それなのに、「イーグルサイト」なんていう組織は聞いたことがなかった。

つまりまだ噂になるほどの活動をしていないのだ。

そんな組織の話をなぜ今するのか……真意が掴めなかった。

「ああ、まだ大した脅威ではない。だが、不思議なんだ。」

そう言って、梨杜さんは1枚の手紙を取り出した。

そこにはワシのマークと、何かを象徴するかのような燃える瞳が入った六芒星が描いてあった。

そして裏面には明日の日付と場所、それと「ご挨拶に伺います。」の文字だけ。

「1週間ほど前、この紙が本部の郵便受けに入っていた。すぐに出所を調べたが、分かったのは組織の名前と、10代の青少年の集まりだってことだけ。組織の本拠地も、いつ設立されたのかも、代表者の名前さえ、分からなかった。」

……梨杜さんが調べたのに、情報が出ない。

確かにそれは不思議だ。

梨杜さんは組織でも随一のハッカーだ。

ネット上の情報はもちろん、監視カメラや、個人PCにもアクセスして、ありとあらゆる情報を手に入れることができる。

どれだけ巧妙に隠していても、梨杜さんに尻尾を掴まれて壊滅させられた組織をいくつも知っている。

それほど、梨杜さんは優れたハッカーなのだ。

そんな梨杜さんが調べてるのに、情報が出ないなんてことがあるのか?