いきたい僕ら

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俺たちが初めて会ったのは、確か俺が6歳になったばかりの時だった。

忘れもしない、8月31日。

本来閉館日であるはずの地域の児童館に、俺と律樹、そしてそれぞれの母親は集まっていた。

理由は、母親たちが窓にペイントアートを描く日だったからだ。

児童館の窓には、毎月異なる絵が描かれる。

4月なら桜、5月なら鯉のぼりという風に、それぞれの月にあった絵を描いていくのだ。

母親たちはそれをボランティアで行っていた。

「まぁ、律樹くん、大きくなったね!この調子ならすぐに朝陽の身長も抜かしちゃうかもしれないよ。」

「そんなこと言って、朝陽くんだってこれからもっと大きくなるでしょ?きっと律樹なんて置いてけぼりよ。」

母親たちが、俺たちを無視してそんな会話をしていたのを覚えている。

律樹は母親の後ろに隠れて、ビクビクしていた。

俺は、ただ華野さんの手を握って立っているだけだった。

華野さんは俺の母親……みたいな人。

このときはまだ本当の母親だと思っていたけど、これから約8ヶ月後に思い知らされた。

最悪な形で。

まあ、今は関係ない話だ。

「朝陽、律樹くんと遊んできな。」

「律樹も朝陽くんと遊んでなさい。きっと楽しいよ。」

それぞれの母親がそう言い、俺たちはお互いに正面に立った。

このときの俺はそうでもなかったけど、律樹は人見知りが激しかった。

あとで知った話だけど、当時律樹は幼稚園でいじめられていたらしい。

幼稚園児がやることだから、せいぜい仲間はずれ程度だけど、それでも律樹が人に警戒心を持つには十分だった。

俺は怯える律樹を怖がらせないように、なるべく優しく声をかけた。

「えと、律樹?……あそぼ?」

手を差し出す。

律樹はその手と母親……実樹さんの顔を不安げに交互に見た。

実樹さんはニコニコするだけで、何も言わなかった。

しばらくそうして、やがて律樹はおずおずといった様子で俺の手を握った。

俺はその手をしっかりと掴んで、遊び場の方へと走った。

「それじゃ、行ってくる!」

「え?ちょ……」

「いってらっしゃい!」

「楽しんできてねー。」

……これが、俺たちのファーストコンタクトだった。