いきたい僕ら

……気付いたら僕は病室のベッドで寝ていた。

外は薄明るくなっていて、屋上にいたときから数時間経っているだろうことがわかる。

ゆっくりと体を起こす。

やっぱりどこも痛まない。

すると入り口から音がして、レンが入ってきた。

「律樹さん、おはようございます。」

ふわりと笑って、レンが言った。

「おはよう、レン。ありがとね、運んでくれて。」

自分で戻ってきた記憶がないから、そう言ったんだけど……。

「へ?律樹さん、自分で歩いてましたよ?寒い、とか言って。」

ぜんっぜん覚えてない。

「……もしかして、覚えてないです?」

僕が頷くと、レンは僕の頭を撫でながら笑顔で言った。

「きっと疲れてたんですね。まだ起きたばっかだし、体力もかなり減ってると思うんで、これからしばらくはそういうことがあるかもしれないですね。」

「そっか……やだなぁ……。」

僕の呟きにレンは何も返さなかった。

「……ねぇレン。」

「はい?」

特に何をするでもなく、ただ座っているレンに声をかけた。

「僕が起きたこと、まだ梨杜さんには言わないでほしい。少なくとも、今日1日は。」

どれだけ寝てたか知らないけど、短い時間じゃないはずだ。

かなりの迷惑と心配をかけたと思うけど、もうちょっとだけ、知られたくなかった。

「……いいですけど……何するつもりですか?」

「……別に、何も。話したい人がいるだけ。堅気の人だから、あんまり、ね。」

僕らには敵が多い。

何気ない1日でも、常に周りには一定の警戒心を持っている。

そんな環境に身を置いている僕らと関わったと知れたら、何されるかわかったものじゃない。

話が通じる人だったらいいけど、そういうことに手を出すやつは大体話が通じないやつだ。

危険なことに巻き込まないためにも、知っている人はなるべく少なくしたほうがいいと思った。

「……律樹さんが、行くんですか?来てもらうんじゃなくて。」

行くって言ったらついてきそうだなぁ……。

「呼べるなら呼びたいけど、多分無理。まだ立ち直れていないだろうから、僕が行かないと。」

僕には朝陽がいたけど、あの人たちには誰もいない。

だから、他でもない僕が、行かないといけない。

「……」

レンは何か言いたそうな顔で黙っていた。

それがちょっと面白くて、僕は笑いながら言った。

「別についてきてもいいよ。話したんでしょ?朝陽と。」

レンは頷いた。