いきたい僕ら

……ゆっくりと目を開ける。

部屋は真っ暗で、外からの灯りもないことから、夜だということがわかった。

体を起こそうとするとお腹に懐かしい重みを感じた。

そこにはレンが寝ていた。

その頬には涙の跡がくっきりと残っている。

どれだけ泣いたのだろう。

僕には想像も出来なかった。

起こさないように注意しながらレンの頭をどかし、ベッドから降りる。

どこかが痛むこともなく、立ち上がることができた。

静かに病室を出て屋上へと向かう。

鍵は近くに落ちていた針金で勝手に開けさせてもらった。

フェンスの手前まで行き、体を預けるようにして座る。

空にはたくさんの星が輝いていた。

涙が溢れて止まらなかった。

「朝陽……」

心にはポッカリと穴が空いたような喪失感があった。

家族が死んだときもそうだった。

でも、長い時間をかけて埋まっていった。

やっとカサブタになったそれを抉り取られて、穴は前よりも広がった。

この穴はどれだけの間、僕を苦しめるのだろう。

「朝陽……全然、大丈夫じゃないよ……。」

「律樹さん……」

ふと、声が聞こえた。

「律樹さん、俺……」

「手紙。」

レンなら知っているはずだ。

「手紙、なんて書いてあったの?」

レンは1枚の紙を差し出した。

そこには電話番号と「助けて」の3文字。

「やっぱり……僕のせいじゃん……。」

手紙を握りしめて、レンの目を見た。

「レン、1発殴らせて。」

「え?」

僕は返事を聞く前に立ち上がり、レンの頬に平手打ちをした。

軽い音が夜の闇にこだまする。

「なんで?なんで言ってくれなかったの?知ってたら朝陽を救えたかもしれないのに!ねえ、なんで?!」

レンの肩を掴んで言っていた。

レンの体が強張った。

レンは僕から目を逸らして言った。

「……だって、そう言われたから……。」

泣きそうな声だった。

「俺……その番号に電話して……話したんです……。朝陽さんと……。それで……『律樹には言わないで』、って……そう、言われて……!ごめん、なさい……律樹さん……ごめんなさい……!」

泣いていた。

分かっていた。

本質的に朝陽とレンは同じだ。

自分たちがどれだけ苦しもうと、僕がなるべく傷つかないように立ち回る。

僕がそれを知った時にどうなるか考えもしないで。

……朝陽のばか……。

やっぱり、朝陽は大っ嫌い……。

僕はレンを抱きしめて、頭を撫でた。

「……ごめん。気づけなくて。重かったよね?辛かったよね?苦しかったよね?レン、ごめんね。」

「律樹、さん……?」

「あと、ありがとう……。」

大事にしてくれて。

覚えててくれて。

そばにいてくれて……。

それだけで僕は、生きていけるから。

これから先もずっと。

だから朝陽。

待っててね。

どこかで朝陽が笑った気がした。

……END