いきたい僕ら

面白い番組がやっていないかと、いくつかチャンネルを回すが、どこもかしこもニュースばかりだった。

仕方なくそれを見ていると、1つのニュースが目に飛び込んできた。

それは見たくないもの、決して起こるはずのないもの、現実ではあり得てはならないはずのものだった。

「……次のニュースです。今日未明、県東部の海岸で遺体が発見されました。遺体の身元は、3日前から行方が分からなくなっていた……」

女性のキャスターが無機質な声で読み上げる。

よく知る海岸に全く知らないブルーシートによって目隠しされた映像が流れている。

そしてその右下には、成長して大人びているが、見覚えのある男の顔が映っていた。

「……小藤朝陽さん16歳と見られ、警察は自殺の可能性が高いとみて捜査を進めています。」

「……!」

目の前が真っ暗になった。

「遺体は海岸の岩場で発見され、上部の崖から転落したと考え……。」

息が、できない……。

「……っ、は……」

苦しい。ただひたすらに、苦しさに襲われていた。

まるで海の底に沈むように、何も聞こえず、何も言えず。

その苦しみは、家族を失った時よりも大きく、重かった。

朝陽が、自殺?

なんで?どうして??

約束したのに……。

『おいていかない』って、『1人にしない』って約束したのに……!

なんでみんな、僕を置いていっちゃうの……?

しかも見つかったのが今朝ってことは、飛んだのは昨日……?

僕の夢は、現実……?

その事実に気づいた瞬間、僕の中で何かが壊れた。

「うぅ……くっ……」

吐き気を感じて、口元に手を当てる。

急いで洗面所へ向かい、全てを吐き出した。

痛みも、悲しみも、苦しみも。

さっき枯れ果てたはずなのに、涙が止まらなかった。

胃の中身が空になってもそれは治らず、何度もえずいて胃液を吐き出した。

痛みなんて感じなかった。

数十分そうして、やっと落ち着いてきた気がした。

体は重く、目の前は暗いままだったけど、痛みも苦しみも悲しみも、感じられなくなっていた。

……頭は、驚くほど冷静に、ただひとつのことを考えていた。

自分が壊れていることには気づいていた。

この状態でレンのところに行けば、なんとかしてくれるだろうことも分かっていた。

でもそうしなかった。

僕はそのままの足で建物の屋上へと向かった。

朝陽がいなくなったんなら、僕にはもう生きてる理由はない。

だって僕は朝陽の言葉だけで生かされていたんだから。

屋上に出る扉には鍵がかかっていた。

でもそんなもの、僕にとってはないようなものだ。

針金を使ってこじ開け、外へと出た。

4階建ての建物の屋上。

朝陽はきっともっと高いところから飛んだんだろうけど、この辺りにはそんなものない。

足を止めることなく、建物の端へと向かう。

転落防止のフェンスを乗り越え、へりに立った。

「……ねぇ、朝陽……たすけて……!」

僕はそこから飛び降りた。

……数秒もしないうちに全身がものすごい衝撃に襲われ、意識を手放した。