いきたい僕ら

……久しぶりに、夢を見た。

恐ろしい闇が、そこにはあった。

だけど僕は今までに何回もこの闇を体験している。

だから怖さはそれほど無かった。

ただ、その悲しみに慣れた、慣れてしまった自分の方がずっと恐ろしかった。

あてもなく歩いていると、近くから人の声がした。

死んでしまった、僕の家族たち。

声の方を見ると、3人は「またね」と言うように僕に手を振り、光の方へと向かってしまった。

僕は無意識にそれを追いかける。

いつもと同じ夢なら、そこで覚醒するはずだった。

でも今日は違った。

みんなの方へ向かおうとする僕の肩を誰かが掴んだのだ。

驚いて後ろを見れば、そこには笑顔の朝陽がいた。

「朝陽!」

僕は嬉しくて、朝陽に飛びついた。

朝陽もそれを受け止めてくれた。

僕と違って、大きくてがっしりとした体つき。

男らしく成長した朝陽が羨ましかった。

「律樹、元気だったか?」

前と変わらず優しく声をかけてくれた。

まるで、何年も会っていなかったのが嘘かと錯覚するほど、僕らにとって当たり前の光景だった。

「元気だったよ。朝陽も逞しくなったね。ちょっと羨ましいよ。」

口を尖らせて言うと、朝陽は意地悪な笑顔になった。

「いいだろ?お前は相変わらずひょろひょろだな!」

「むー……」

僕が不機嫌に顔を背けると、すぐにいつもの優しい笑顔に戻って謝ってくれる。

なにからなにまで、あの時のままだった。

気づけばそこには闇はなく、波の音が聞こえる崖になっていた。

月の明かりだけが、僕らを照らす。

地面に隣同士で座って、しばらく波の音を聞いていた。

「……なぁ、律樹。」

朝陽が落ち着いた様子で声をかけてくる。

「なに?」

「律樹は、俺を許してくれるか?」

「?」

どういうことかわからなくて、朝陽の顔を覗き込んだ。

「うえっ?!ちょ、朝陽大丈夫?」

朝陽は泣いていた。

少なくとも僕の前では泣いたことがなかったのに、朝陽は目から大粒の涙をこぼしていた。

……いや、1回だけ、あったかも。

僕は、僕が泣いていたときにいつも朝陽がしてくれていたのと同じように、頭を撫でた。

優しく、丁寧に。

「朝陽、大丈夫だよ。何があったか知らないけど、僕が朝陽を許さないなんてことないんだから。」

僕がそう言うと、朝陽は堰を切ったように声をあげて泣き出した。

僕は朝陽を抱きしめて、頭を撫で続けた。

……まるであの時と同じだ。

違うのは僕じゃなくて、朝陽が泣いていること。

胸が張り裂けそうだった。

あの時の朝陽も、こんなに辛い思いをしてたのかな……。