いきたい僕ら

帰りの電車の中で、窓の外を見ながらレンが口を開いた。

「ねぇ律樹さん。朝陽さんって、どんな人ですか?」

「え……?」

「律樹さん、寝言でたまに言ってるんですよ。『朝陽』って。それでどんな人か気になって……」

……何それ。

「……レン、もしかして嫉妬?」

今の僕は相当意地の悪い笑顔をしていることだろう。

「いいえ。知りたいだけです。律樹さんにとって、彼がどんな人なのか。」

レンは真面目な声で言った。

でも目は合わせてくれなかった。

「……朝陽は優しいやつだったよ。」

誰かに朝陽のことを話すのは初めてだった。

名前くらいしか出してなかったし、誰も突っ込んで聞いてくることがなかったから。

「初めて会ったのは僕が4歳のときだったかな。最初は怖い人って印象だったけど、なんかこの人は信頼できるって思ったんだよね。」

直感だった。

あえて言うなら、運命だった。

「家族が死んだときも、慰めに来てくれてさ。1人じゃないって思わせてくれた。」

僕がよく頭を撫でるのは、そのときに1番安心したのがそれだったからだ。

「そのときに僕思ったんだ。朝陽さえいれば、それでいいやって。家族はいなくなったけど、朝陽はいてくれるって。」

約束、したから。

「……大事な人、なんですね。」

やっぱり目を合わせてくれなかった。

「……そうだね。」

ただただ悲しそうに、話していた。

「……律樹さんは、こんな俺を許してくれますか……?」

そのつぶやきは、僕には聞こえていなかった。