いきたい僕ら

『君がいるから、大丈夫だよ。律樹は……君がいる限り、絶対に大丈夫なんだ。』

俺に、というより、自分に言い聞かせているみたいだった。

「そんなの……そんなの、根拠がないじゃないか!」

『根拠なんかなくても、この「俺」が、大丈夫だって言ってんだ!それとも、律樹が信頼してるだけの男の言葉は信用できない?』

絶対的な自信。

それに逆らうことは、俺にはできなかった。

「っ……いいえ。」

『でしょ?』

満足げに、彼は言った。

でも、納得できなかった。

「……じゃあ、教えてください。なんで、そんなことをしようと思ったんですか?」

『……聞いてどうするの?』

暗に聞くなと言っているのが伝わってくる。

だがあいにく、それで諦めるほど、俺は空気を読める人間じゃない。

「納得できなかったら止めます。」

『どうして?君にとって俺は、律樹の友達ってだけで、俺が生きようと死のうと、君には何の関係もないはずだ。君もそう言っていただろう?』

ここまで聞いといて引き下がれってんのか?

俺に、そこまで薄情な人間になれと?

……無理な相談だな。

「……状況が変わりました。関係あります。大有りです。あなたが死んだあと、誰が律樹さんの面倒を見ると思ってるんですか?」

俺がそういうと、朝陽さんはまた少し笑った。

『……違いない。愉快な話じゃないよ?』

「そんなもの、この世に腐るほどありますよ。」

幼い時に家族を全員亡くした少年の話とか。

両親に虐待された上に、瀕死の状態で捨てられた子供の話とか……。

『それもそっか。』

朝陽さんは一拍間を置いて話し始めた。

『……いじめだよ。中1の2学期からだったから、もう3年前からになるかな。』

「いじめ……」

中高生の中では、比較的よくある類の話だ。

『そう。身体的にも、精神的にも。徹底的にやられたよ。確か俺の友達の好きな人が、俺のことが好きで、俺の友達がそれに嫉妬して……みたいな、三角関係みたいなのがきっかけだったと思う。』

「……くだらな。」

思わず口をついて出てしまった。

慌てて口を閉じるが、出てしまったものは取り消せない。

『ほんと、くだらないよ。そこからなんかありもしない疑惑吹っかけられたり、仕事押し付けられたり。あぁ、何気に1番きたのは集団無視だったな。』

まるで何も気にしていないかのように明るく話すが、その表情は死んでいることだろう。

見えないからわからないけど。

この人と律樹さんはどことなく似ているから。

自分の辛さを押し込めて、何でもないように振る舞うのがうますぎる。