いきたい僕ら

『もしもし?』

疲れ切った、男の子の声だった。

でも少しだけ、楽しそうな声をしていた。

悲しそうでもあった。

その声に申し訳なさが募る。

俺は、律樹さんじゃない。

「もしもし。俺、律樹さんの部下……じゃなくて、友人の蓮斗といいます。小藤朝陽さんで合っていますか?」

電話の向こうで、落胆した声が聞こえた。

『そうですけど……あの、律樹は?』

それを隠そうと、できるだけ明るい声で言っているのが分かった。

別にいいのに。

みんな、もっと素直に言いたいこと言っていいのに。

「律樹さんは……。」

そういう俺も、素直に言えない。

でも、言わないといけない。

「……今、入院してます。」

『は?!入院って……あいつなんかやらかしたんですか?!』

わかりやすく動揺した。

律樹さんが朝陽さんのことが大切なのと同時に、朝陽さんも、律樹さんのことが大事なんだ。

「いいえ。律樹さんが何かしたっていうより、俺がそうさせたっていう方が正しいっていうか……ってそれはよくて!」

本題を忘れるところだった。

『よくない!』

即答だった。

無視してこっちの話を続ける。

「あなたは大丈夫なんですか?」

『俺より律樹は?!』

……無理だな。

「……個人情報なので、詳しくは言えませんが、無事です。」

俺がそう言うと、ほっとしたように息が漏れていた。

「それで、あなたはどうなんですか?」

意図せず、冷たい声になってしまった。

『……君には関係ないよ。』

向こうも、冷めた声になる。

「そうです。俺には関係ありません。」

……正直、俺は「朝陽」さんがどうなろうと知ったことじゃない。

「でも、律樹さんには関係あります。」

ただ、朝陽さんに何かあったことが原因で、律樹さんが自分を責めるのが嫌なだけだ。

「律樹さんはあなたのことが大切なようなので、何かあったんなら、俺がなんとかしたいんです。」

電話の向こうからの返事はない。

何かを考えているようだった。

『……蓮斗、って言ったっけ。』

少しの間ののち、そう言う声が聞こえた。

「……はい。」

『君は、律樹のことが大事?』

「はい。」

もちろん大事だ。

何よりも、もしかしたら、自分よりも……。

『なんで?』

聞かれて考えてみる。

いつからかは分からない、どうしてかも分からない。

だけど、どうしようもない事実があった。

「明確な理由は分からないですけど、多分、好きなんだと思います。」

つまりはそういうことだ。