いきたい僕ら

……気づけば世界には色と音が戻り、僕はベッドに寝かされていた。

「あ、律樹さん。おはようございます。」

レンは何事もなかったかのように、普通にそう言った。

「レン!だい……っ!」

勢いよく起きようとして、脇腹の傷がズキンと痛む。

「だから、勢いよく動いちゃダメですって……。」

レンはそう言いながら起き上がるのを手伝ってくれた。

「……ごめん。ありがとう。」

傷の痛みを堪えながら、様子を観察する。

見た感じ変なところはない。

でもいじってるのは記憶だ。

ちょっと確かめてみるか……。

「ねぇレン。僕ってこの怪我、どこでしたんだっけ?」

記憶が変わっていないんだったら、あの洞窟で謎現象が起こって、レンの傷が移った、みたいなことを答えるはずだ。

もしうまくいってるなら、別の答えが返ってくるはず。

「へ?律樹さん、もしかして記憶喪失……?」

あ、なんか別方面でやばそう……?

「……いや、そういうんじゃないから。」

「……わかりました。もう一回説明しますね。」

レンはベッドの隣の椅子に座って話し始めた。

「まず、俺たちが2人で任務に出てたんですよ。それで、律樹さんの後ろから敵が襲ってきて、俺が律樹さんを突き飛ばして俺が刺される。で、なんか不思議パワーが働いて、俺の傷が律樹さんに移ってこうなったんです。」

「え?マジ?」

……あの神!おいゴラ!!ほぼそのまま覚えてんじゃねえかよ!

「……あはは!」

レンは途端に笑い出した。

「冗談ですよ、律樹さん。ちょっとからかっただけです。」

冗談……。

「紛らわしいことしないでよ……。」

一気に体の力が抜けた。

「本当は油断して刺されそうになった俺を、律樹さんが庇ってくれたんです。すいません。俺のせいで……。」

……そんなふうに改変されたんだね。

それはそれで、なんか嫌だな。

レンが自分の責任だって思ってるところが特に。

「レンのせいじゃないよ。怪我はどれも自己責任だから。」

僕はレンの頭を撫でながら言った。

「そういえば、梨杜さんと蒼さんは?来てなかったっけ?」

変わるのは記憶と記録だけだから、ここに来てたという事実は変わってないはず。

そう思って聞いてみた。

「あぁ、お2人はもう帰りましたよ。律樹さんが疲れて眠っちゃったから起こすのも悪いって言って。なにか話したいことでもありました?」

「いや、大丈夫だよ。」

とりあえず、何かを調べるとかいう様子はないと思っていいのかな?