妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 夕焼けが空を赤く染める。

 山鳥が巣へと帰っていく夕暮れに、私は学校からの帰り道を急いでいた。

「ひゃあ、すっかり遅くなっちゃった」

 私は何の部活にも入っていないし、委員会は月に一度の大掃除以外に仕事のない美化委員。

 楽な委員会だなって思っていたんだけれど、なんと今日の放課後、急に美化委員が全員呼び出されたの。

 原因は、学校の壁に書かれた大きな落書き。

 墨で書かれた大きな落書きはなかなか消えなくて、帰るのが遅くなったんだ。

 それにしても――。

 私はさっき消した落書きを思い出した。

 校舎の壁には、黒い墨で大きく


 『蒼木凪季を呪い殺してやる』


 って書いてあったの。

 ……蒼木凪季って、あの生徒会長で国宝級イケメンの蒼木先輩のことだよね?

 私は今朝見た蒼木先輩の顔を思い出した。

 あの先輩、何か人にうらまれるようなことでもしているのかなあ。

 「呪い殺す」だなんて、神社の娘としては放っておかない言葉だけど……。

 やっぱり女の子がらみかな。

 ひょっとして、ストーカーだったりして。

 私がそんなことを考えながら走っていると、不意に太陽が雲にかくれ、日差しがさえぎられた。

 ザワザワと木の葉が風でこすれる。

 私のブルリと背筋に寒いものが走った。

 何? この気配――。

 なんだか妙な気配を感じで立ち止まると、男の子の声が聞こえてきた。

「うわあっ、はなせっ……!」

 私はゴクリとつばを飲みこんだ。

 この声――用水路の方から?