妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 映画館を出た私たちは、二人で駅前をお散歩することにした。

 休日の駅前は人でいっぱい。

 私ははぐれないように、必死で先輩の後をついて歩いた。

「先輩、待ってくださ――」

 すると、ゲームセンターの入り口にあるクレーンゲームが目に飛びこんでくる。

「わあ、このキーホルダー可愛い!」

 私は思わず高い声を上げた。

 わあ。これ、私が最近ハマってるタコのキャラクター、「タコタコちゃん」だ。

 タコタコちゃんっていうのは最近SNSで話題の癒し系四コマ漫画のキャラのこと。

 最近アニメ化も決まった大人気キャラクターなんだ。

 いいなあ、ほしいなあ。

 でも、クレーンゲームなんてやったことないし……。

 私が悩んでいると、蒼木先輩が顔をのぞきこんでくる。

「これ、欲しいんだ?」

「は、はい。でも難しそうですよね」

 私が悩んでいると、凪季がチャリンチャリンと百円玉を機会に入れた。

「えっ」

「ほしいんだろ? 俺が取ってやる」

「でも……悪いですよ、そんなの」

「いいから。俺が取ってあげたいの。ほしいのはどのタコだ?」

「えっと……じゃあ、あのピンクの」

「ピンクね」

 レバーとボタンを静かに押し、クレーンを器用に操る凪季。

 その真剣な横顔にドキリと胸が鳴る。

 クレーンがゆっくりと降りていき、ピンクのキーホルダーをそっとつかむ。

 ……すごいっ。

 先輩、クレーンゲームも上手いんだぁ。

 ところが、持ち上がった瞬間、隣にあった水色のタコまで一緒にくっついてしまった。

 ポトン。

 わあ、取れた!

 先輩が取り出し口に手を入れ、ピンクと水色、二つのタコを取り出す。

「ピンク、ほしいんだろ?」