「朱里、帰るぞ」

 放課後、蒼木先輩が教室まで迎えに来てくれる。

「は、はいっ!」

 私はみんなの目を気にしながらも立ち上がり、先輩の元へと向かった。

「行ってらっしゃ~い!」
「お幸せに!」

 心菜ちゃんたち女子がニヤニヤ顔で手を振ってくれる。

 私は引きつった笑顔で手を振り返すと先輩と一緒に教室を出た。

 靴箱の前まで来て、そっと蓋を開ける。

 良かった。靴には何もされてないみたい。

 てっきり泥だらけにされたり画鋲を入れられたりするかと思った……。

 ほっとしながら校門を出る。

「さ、行こう」

 私はキョロキョロと辺りを見回した。

 朝乗ってきた白い車は停まっていない。

「……えっと、帰りは車じゃないんですね」

「ああ、朱里が目立つのは嫌だと言っていたから帰りの車は断った」

 いや、これはこれで目立つんですけど……?

 私が戸惑っていると、蒼木先輩がスタスタと歩いていく。

「ま……待って下さーい!」

 前を歩く蒼木先輩を慌てて追いかける。

 もうっ、先輩ったら歩くのが速いなあ……。

 私が必死に蒼木先輩を追いかけていると、蒼木先輩がくるりと振り返った。

「……そういえば女の子は歩くのが遅いんだっけ。ほら」

 私に向かって手を差し伸べてくる蒼木先輩。

 えっ……と。

 これは手をつなげってことですか……?