妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 気持ちよく晴れた澄んだ朝。

 私は肌寒い空気に震えながら神社の掃除をはじめた。

 はあ。

 とんでもないことになっちゃったな……。

 まさか蒼木先輩に妖狐の力を見られて、しかも彼女のフリをしてボディーガードをしなくちゃいけないだなんて。

 私が竹ぼうきを手に大きなため息をついていると、落ち葉をカサリと踏む音がした。

「おはよう、朱里」

「えっ……蒼木先輩!?」

 私が驚いていると、蒼木先輩は顔色一つ変えずに言った。

「昨日渡した計画書に『一緒に登校する』って書いてあっただろ」

「そ、そうでした」

 私は慌てて竹ぼうきを境内のわきに置いた。

 蒼木先輩は神社の中をぐるりと見回した。

「生まれてからずっとこの町にいたんだけど、こんな神社があるなんて知らなかったな」

「そ、それは、大通りから外れた奥にあるし、あまり大っぴらにはしてませんから」

「そうなんだ」

 と、くすんだ朱色の鳥居を見つめた後で、先輩は急にこう切り出してきた。

「……そういえば、この前見た不思議な力はこの神社の巫女の力なのか?」

 ギクリと心臓が鳴る。

「ま、まあ、そのようなものです」

 妖狐の血を引いていると言うのは何となく気が引ける。

 私は曖昧な言葉でごまかした。

「ふーん、すごいな」

 だけど先輩は、それ以上のことは詳しく聞いてこなかった。