ガラリ。

 蒼木先輩が生徒会室のドアを開けた。

「それじゃ、ここで話すか」

「し、失礼します……」

 私はわけも分からないまま生徒会室に入った。

「とりあえずそこ座って」

 蒼木先輩は生徒会室のソファーを指さす。

 私がおずおずとソファーに座ると、先輩は私の真向かいに腰かけた。

 二人の間に微妙な沈黙が流れる。

 私はすっかり縮こまりながら蒼木先輩の言葉を待った。

「さっきも言ったけれど、とりあえずこの間のお礼を言いたい。ありがとう」

 蒼木先輩は表情を崩さずに淡々とした口調で言う。

「いえ……」

 私はどんなことを言われるのかとどきどきして先輩の顔を見た。

「それで……仁科朱里、あんたには俺のそばにいてほしい」

「……はあ」

 私は首をかしげた。

 それってどういうこと?

「もちろん俺のそばにいてくれるのなら、俺はあんたへの助力は惜しまない。実家のお店の経営が苦しいことも把握している。そういう部分でも蒼木グループとして援助してあげられるし、学費やもろもろの費用も――」

 と、そこまで蒼木先輩が話したところで、またしても涼間先輩がパンパンと手を叩きながら部屋に入ってきた。

「ハイハイハイ、ダメだよ、そんなに難しい言葉遣いじゃ。もっとストレートに言わないと」