〇学校の外観
  朝 登校風景


〇莉恋のクラス
  莉恋が席に着いた途端、おもむろに莉恋の席の机に腰かける天馬 
  天馬の行動にざわつく教室
  引きつり顔で天馬を見上げる莉恋

 莉恋「あの・・・これって、なんのマウント?」

  フッと鼻で笑う天馬 机の上から莉恋を見下ろす

 天馬「このクラスの全男子へのマウント。莉恋が俺のもの的な?」

  その発言に周囲が冷やかしの声をあげる。

 生徒A「えー! お前ら、つき合ってんの⁉」
 生徒B「マジで⁉」
  
  青ざめて否定しようとする莉恋に、闇堕ち笑顔の天馬

 天馬「そう、昨日から! だ・よ・ね?」
 莉恋「う、うん!」

 生徒A・B「ヒュー! おめでとう‼」

  お祝いムードの教室にひらひらと手を振る天馬

 莉恋( ああっ、私がコツコツ築き上げた慎ましい学園ライフが、音を立てて崩れていく‼)


〇高校の屋上
  昼休み
  莉恋と天馬がお弁当を食べている。
  天馬はコンビニ弁当 
  莉恋は購買のパン

 天馬「明日からの三連休、莉恋は予定ないよね?」
 莉恋「失礼ね、勝手に決めつけないでよ! 」
 天馬「あるの?」

  意外な顏の天馬

 莉恋「ないけども!」

  悔しそうな顔の莉恋に、ニヤリとする天馬

 天馬「海に行かない? 泊まりで。」
 莉恋「泊まりって、キャンプ?」
 天馬「車中泊になると思う。うちの伯父さんのキャンピングカーで雑魚寝。」
 莉恋「ああ、サーフィンやってる伯父さんがいるんだっけ。」
 天馬「そう。俺もたまに波乗りに連れてってもらうんだけど、莉恋に見てほしいものがあって。」

 莉恋(えっ、泊まりでサーフィンとか、めっちゃ楽しそう・・・でも、これも天馬の罠⁉)

 莉恋「ママが良いって言ったらいいけど・・・。」
 天馬「リコママなら大丈夫。昨日、メールで良いっていってたから。」
 莉恋「エッ、いつのまに? 」
 天馬「この前プリント届けた時に、アプリでプルプルした。」

  スマホのメッセージアプリ画面を見せる天馬 「ハイ、喜んで♡」というスタンプ
 莉恋、心の中でむせび泣く

 莉恋(親ガチャーーーッ‼)


〇莉恋の家の前
  夜、莉恋の家の前に止まるキャンピングカー
  アウトドアの格好にリュックを背負った莉恋
  運転席から降りて来た天馬(Tシャツにスウェットパンツにサンダル姿)
  天馬の伯父の隼人(天馬と同じ格好にバケットハットを被った、かなりのイケメン)

 天馬「で、これが伯父さんの隼人。」
 隼人「こんばんは。」
 莉恋「はじめまして、天馬クンの友人の莉恋です。今日はよろしくお願いします。」
 隼人「あれ、ともだちなの? 彼女ができたって聞いてたけど・・・まさか天馬の勘違い?」

  闇堕ち顏で莉恋をにらむ天馬
  慌てて笑顔で取り繕う莉恋

 莉恋「ま、間違えました! 彼女です! 昨日から!」
 隼人「(はや)おじです。よろしくおねーシャース。」

  帽子を取って微笑む隼人

 莉恋「あれ・・・。」

  会釈してフリーズする莉恋 隼人の顔を穴のあくほど見つめる
  苦笑いで自分の顔を触る隼人

 隼人「俺の顔に、なんかついてる?」
 莉恋「あの、失礼ながら、隼人さんの顔が私の推しにソックリだったもので。そういえば、名前もドンピシャで・・・。」

  面白くなさそうにつぶやく天馬

 天馬「失礼じゃないよ、本人だから。」
 莉恋「え?」
 
  キョトンとする莉恋
  親指と人差し指を交差させる『LOVE』のハンドサインをしてウインクする隼人 

 隼人「槇 隼人(まき はやと)。俳優やってまーす。」
 莉恋「フォオ‼ 推し降臨⁉」

  顏を真っ赤にする莉恋

 莉恋「ガチのファンで、ゴメンなさい‼」
    
  コンクリートの地面に、秒で土下座する莉恋 
  引きぎみの天馬と隼人

 莉恋「隼人さまのファン歴9年の私が、課金もしないでご尊顔をこの目で拝見できる世界線がこの世にあったなんて・・・♡」
 隼人「天馬とは幼なじみなんだって? なら、もっと早く紹介してほしかったよね。」
 莉恋「え、え? 私は昔から隼人さまが好きだったのに・・・天馬は今まで一度も、自分の伯父さんだなんて言わなかったよね⁉」
 天馬「・・・。」
 隼人「なるほどね。まあ、痴話げんかはあとだな。莉恋ちゃん、朝までには海に着きたいからとりあえず車に乗って。」
 莉恋「ハ、ハイ!」

  一瞬でテンション爆上げの莉恋 喜んで後部座席に乗り込む
  隼人が天馬に煽るようにあごをあげてニヤッと笑う

 隼人「ちっちぇープライド・・・。マジで()い甥っ子だな。」

  闇堕ちモードの天馬 隼人をにらむ

 天馬「だまれ。絶対に莉恋には言うなよ。」


〇夜の海岸線を横目に走り続けるキャンピングカー
  レゲエを聴きながら運転する隼人 バックミラーで後部座席を確認
  後部座席の莉恋と天馬はシートをフラットにしてブランケットにくるまって寝ている


〇キャンピングカーの車内(明け方)
  身震いして、後部座席で目覚める莉恋

 莉恋「わぁ・・・キレイ!」

  窓から差し込む朝日 手前に白い砂浜
  海をはさんで白んでいく明け方の海岸線に感動する莉恋
  
 隼人「もう少ししたら明るくなるから、メシ食ってのんびり準備しよう。」
  
  コンビニおにぎりを頬張る天馬
  菓子パンを食べた莉恋が、ポリ袋をゴミ袋にしようとする

 天馬「それ、あとで使うから取っておいて」

   ポリ袋を手に首をかしげる莉恋


〇キャンピングカーのバックドア
  バックドアからサーフボードや荷物を下ろす隼人 莉恋にウエットスーツを手渡す

 隼人「莉恋ちゃん、これ着てみて? 何種類かサイズもあるから言ってね。」



〇カーテンを閉めたキャンピングカーの車内
   
  カーテンを閉め切った車内で着替える莉恋(ビキニ姿)
  足を入れたウエットスーツが上にあがらず、青ざめる

 莉恋(ヤバ、もしかして私ってデブすぎ?)

  車の扉を少し開けて天馬をキョロキョロ探す莉恋
  車から顔を出すビキニの莉恋に気がついた天馬が、慌てて車内に入ってくる

  ビキニ姿の莉恋に赤くなって、目をそらす天馬

 天馬「なな、何を、どど、どうしたの?」
 莉恋「私ね、太いからこのスーツはキツくて無理かも・・・。」
 天馬「だ、大丈夫。ウエットはキツくて正解。首回りが緩いと水が入ってくるから、すぐに寒くて動けなくなるよ。」
 莉恋「でも・・・。」

  目をそらせたままの天馬
  ちゃんと自分を見てくれなくて、ふくれる莉恋

 莉恋(もうっ、見たらすぐにわかるのに! ・・・また天馬にイジワルされてる?)

 莉恋「ちゃんと見て! ふくらはぎから上に上がらないの!これじゃあ公開処刑だよッ‼」

  ようやく莉恋に焦点を合わせた天馬は、身体から蒸気が立ちのぼるくらいに汗ばむ

 天馬「ウエットは一気に着れないから、パンストを履くように少しずつって習った。俺は履かないから知らんけど。」

  ぎこちなく莉恋の足元に落ちていたポリ袋を拾って、莉恋の足にくぐらせる天馬
  
 天馬「あと裏技で、ポリ袋を手足に入れてから袖を通すと楽に着れるんだ。」
 莉恋「スゴ!全然違うじゃん。私、デブだから着れないのかと思った!」

  無邪気に喜ぶ莉恋
  耳まで真っ赤になって再び目をそらす天馬 

 天馬「たぶん、背中のファスナーも上まで上げられないと思うから、できたら呼んで。あ、隼人には絶対頼むなよ!」
 莉恋「隼人さまになんて・・・無理だよ。」

  莉恋が顏を赤くして本気で照れてうつむく。

 莉恋(想像しただけで、恥ずかしすぎて死ねる!)


〇キャンピングカーの車外
  サイドドアを閉めると、しゃがみ込みむ天馬 顏を両手で押さえて悶える

 天馬「・・・しんど。」

 天馬(アイツ、俺のこと圏外すぎだろ!)