〇高校の外観(校門前)
  朝、まばらに登校する生徒たち


〇校門横の生垣
  ブレザーの制服をきちんと着こなすイケメンの生徒会長・瑞月(みづき)が校門を通る生徒を盗撮している 

  登校する生徒たちにカメラのフォーカスが当たる
  スカートが短い生徒、派手な髪色の生徒、そして全身校則違反の天馬がアップでスマホの写真に収められる
   
  スマホカメラのプレビュー画面を片手に、苦悩の表情を浮かべる瑞月
 
 瑞月「許せないッ‼」


〇高校の生徒会室(狭いが整理整頓されている)
  会長の瑞月・副会長・会計・書記の莉恋の四人の生徒が机を囲んで座っている
  机の上にはスナップ写真 
  いずれも校則違反の生徒たち

 瑞月「今日の議題は周知のとおり、この学園の乱れた風紀の取り締まりと改善策についてだ。早急に建設的な意見を求めたい。では、副会長から順に意見を出してくれ。」
 副会長「この学園はクラスの生活係に月一回の校則チェックを任せているので、それでいいと思いま・・。」
 瑞月「君はクビ。次は会計クン、どうぞ。」
 会計「そもそも校則自体が古いんですよ。今の流行に合う新しい校則にしたらいいんじゃな・・・。」
 瑞月「君の頭もアップデートしたまえ。クビ。」
 
  肩を落として立ち去る副会長と会計の男子を見送る二人
  莉恋は唾を「ゴクリ」と飲みこむ

 莉恋「ル、ルールは生徒を守るためにあるのに、わざと破るのはけしからんです!
 クラス係にまかせるのではなく、風紀委員会を発足しましょう‼」
 瑞月「さすが雪河クンだな!」

 莉恋(クビの回避・成功!) 
  
  ホッと胸をなで下ろす莉恋
  瑞月が目を閉じてこめかみを押す

 瑞月「僕は病院の跡取り息子でね。厳格に育てられてきたせいか、こういう輩がいちばん許せないんだ・・・。」
  
  瑞月が莉恋の手を取り、握りしめる

 瑞月「今日から、僕たち生徒会役員が風紀委員を兼任しよう! 」
 莉恋「えっと、今二人をクビにしたばかりですが?」
 瑞月「風紀を愛する我々が二人いれば、十分ではないか!」

  目を輝かせる瑞月
  机に散らばるスナップ写真の中の天馬と目の前のキラキラな瑞月をチラ見する莉恋

 莉恋(制服チェックなんて正直メンド―だけど、憧れの瑞月会長とご一緒できるのは、嬉しいかも♡)

 モノローグ(生徒会役員に莉恋が立候補したのは、8割瑞月の影響である)

  自分の胸を叩く莉恋

 莉恋「私におまかせください!」

〇莉恋の教室
  自分の席でクシャミをする天馬


〇次の日の朝・校門の前
  頭に鉢巻き・手に竹刀を持って制服指導をする莉恋と瑞月
  登校する生徒たちが嫌な顏をして立ち止まる

 天馬「♪」

  骨伝導のワイヤレスイヤホンをした天馬 鼻歌まじりに校門を通り過ぎようとする
  
 瑞月「待て‼」

  瑞月が天馬の鼻先に竹刀を振る
   
 瑞月「キサマ、その格好は何だ!」
 天馬「格好? イイっしょ!」
 
  悪びれない天馬 
  怒って竹刀を地面に叩きつける瑞月

 莉恋「会長、天馬は転校してきたばかりだから、まだこの学園の校則を分かってないんです。」
 
  瑞月と天馬の仲裁に入る莉恋
  自分を指さす瑞月 

 瑞月「転校生? ならばこの僕を見習いたまえ。」
 天馬「ダル。」
 瑞月「キサマ!」

  竹刀を天馬の頭上に振り上げる瑞月
  瑞月の腕にしがみつく莉恋 

 莉恋「会長、令和で竹刀は不適切なのでは!」
 瑞月「体罰に使うわけではない。あくまでも【象徴】だ!」
 莉恋「じゃあ持たないでくださいッ!」

  莉恋ともめているうちに、瑞月のポケットから違反生徒たちのスナップ写真が落ちる
  落ちた写真を手に取る天馬

 天馬「これヤバ! 盗撮、現行犯タイホでーす!」

  天馬の声で振り返る生徒たち

 瑞月「これは、とと、盗撮ではない!」
 天馬「いや、そもそもウチの学園って、校内スマホ禁止じゃね? せんせー、この人、校則違反してますよぉ。」
 瑞月「シャーラァーップ! 風紀の乱れは心の乱れ‼ ゴミカスが!オマエの家の親はどういう教育をしているんだ?」

  サッと天馬が顔色を変えた

 天馬「親なんてカンケー・・・。」

  莉恋が天馬より先に瑞月の前に立つ

 莉恋「天馬のおうちのことは、会長の風紀とは無関係です!」

  意外そうな顏の天馬
  面白くない顏の瑞月

 瑞月「こういう底辺の輩はな、社会に出ても腐ったままだ。悪影響の種を蒔き散らす害虫は、ここで性根を矯正するべきなんだよ。」
 莉恋「会長こそ、性根が腐ってます!」

  驚く顏の瑞月

 天馬「⁉」
 莉恋「好きなものを、好きと表現することは、自由です。それに、偏った考えで人を批判して傷つける人より、彩り豊かな経験をして傷つく人のほうが、私には魅力的に見えます。」

  顏を赤くして涙ぐむ莉恋

 莉恋「私は会長より、素直に自分を表現する天馬を応援したいです‼」
  
  莉恋に論破されて、呆然自失の瑞月
  おもむろに莉恋に近寄る天馬 莉恋の額に自分の手を当てる

 天馬「もしかして、熱、ある?」

  莉恋の手を強引に引いて校門を通り抜ける天馬


〇保健室の外観(教諭巡回中の札)

  教諭が留守の保健室に入る莉恋と天馬
  ベットに赤い顔の莉恋が座る
  頬をおさえる莉恋
  体温計を差し出す天馬

 莉恋「そう言えば、朝、お腹が痛かった。」
 天馬「熱計って。」

  莉恋が体温計を脇の下に平行に挿す

  天馬「体温計は垂直に挿さないと。こうやるの。」
  
  自分のシャツのボタンを外して体温計の挿し方をレクチャーする天馬
  天馬の胸元はだけた胸元に、赤くなる莉恋

 天馬「できないなら。やってやろうか?」
 莉恋「それくらい、自分でできるから!」

  差し出された天馬の手を払う莉恋

 天馬「ムキになりすぎ。」
 莉恋「うるさい。ほっといてくれればいいのに!」

  照れてむくれる莉恋

 天馬「ほっとけないから。」

  ベットの柵に腕を組み、腕に顏をうずめる天馬。

 天馬「かばってくれて、サンキュ。」

  素直な愛され天使モードの天馬
  キュンとする莉恋

〇莉恋の学生カバンの外観

  莉恋のスマホのSNSアプリにメッセージが入る音
  不穏な雰囲気