〇高校の校舎

〇莉恋の教室
  天馬が眠たそうにクラスに入ってくる
  学生カバンを教室後方の棚に掛けている莉恋
  天馬が通るとビクッと怯える

 天馬「ちーす。」
 莉恋「お・・・はよ。」

  黒歴史を暴露されないか、構える莉恋
  自然に莉恋に挨拶する天馬 

 生徒A「懲りないね。昨日没収されたのに、またピアスしてるし。」
 天馬「これ? あー、ニキビだからオケ。」
 生徒B「言い訳ダルッ。」

  すぐに取り巻きに囲まれてワイワイする天馬
  
 莉恋(昨日の闇堕ちキャラは何だったの? 結局、口止めもできていないし・・どうしよう。)

  口止めしたくて焦る莉恋

 莉恋(一人になる時を狙うしかない!)

〇休み時間、体育の着替え、トイレの前
  天馬に話しかけたい莉恋
  天馬は取り巻きに囲まれて、なかなか一人にはならない

  しびれを切らす顏の莉恋 
  イライラしながら天馬の後ろについて廊下を歩く 

 莉恋(アイツ本当になんなん? ホントは闇属性のクセにムダに社交性スキルは高すぎて・・・もー、めっちゃムカつくんですけど!)

 
〇放課後の高校の音楽室
  吹奏楽部の生徒が楽器のパート練習をしている
  鬼の形相でクラリネットを吹く莉恋

 莉恋「かくなる上は邪念を捨てて、ひたすら部活に打ち込むべし‼」
 部員A「雪河さん、心の声ダダ洩れだけど、そんなキャラだった?」
 部員B「ねぇ。」

  莉恋の肩を叩いた女子部員 音楽室の入り口を指さす

 部員B「あの人って雪河さんのクラスの転校生だよね?」

  入部届けを手に入り口に立つ天馬 部活の顧問が対応している 
  愕然と椅子から立ちあがる莉恋

 莉恋(チャラ男が吹奏楽部に⁉)

  立った勢いで倒れそうになる莉恋の譜面台のスタンド
  慌てて莉恋が手を伸ばす 
  天馬の手が莉恋の手に伸びて、触れ合う指先

 莉恋「ワッ!」

 手を引っ込めた莉恋が、天馬の胸に突っ込む
 譜面台と莉恋を受け止める天馬

 天馬「ドジだね、相変わらず。」
 莉恋「う、うるさい。」

  莉恋が天馬から離れる
  譜面台を戻してクスッと笑う天馬
  頬を染める莉恋

 莉恋( 昔の天使に戻った⁉)

 部活の顧問「雨内クンは、やりたい楽器はあるかい?」

  意味ありげに莉恋を見て鼻で笑ってから、教室の隅にあるピアノを指さす天馬

 天馬「ピアノは得意です。たしか昔、雪河さんも同じ教室に通っていたよね♪」
   
  ピアノという単語に敏感になっている莉恋 顏をピクッとひきつらせる

 莉恋「よ、よく覚えてるね、そんな昔のこと!」
 天馬「俺、記憶力はイイほうだから。忘れてないよ、昔のことぜんぶ。」

  フリーズする莉恋

 天馬「でも吹奏楽部だから、ピアノはダメかぁ。」

  莉恋をチラ見して、ニヤリと笑う天馬

 天馬「雪河さんと同じのにします。」

  クラリネットを手にする笑顔の天馬
  クラリネットのパート練習が始まる

 天馬「指導してよ、雪河先輩。あ、ピアノの下以外でおねーシャス。」

  隣の席に座った天馬をにらむ莉恋 声をひそめて天馬の服を引っ張る

 莉恋「ピアノピアノって・・・言いたい事があるなら、ハッキリ言いなさいよ。」
 天馬「ハッキリ言って・・・困るのはそっちじゃないの?」

  天馬の目はすでに闇に堕ちている。
  ヒヨる莉恋

 莉恋(天使じゃないよ、悪魔だよーーー!)

  天馬の隣で、真っ赤な顏でクラリネットを力強く吹く莉恋

  
〇部活帰りの住宅街(道路わきに金網フェンスの公園がある)

 莉恋「ねぇ、待ってよ天馬!」

  早足で先を歩く天馬 
  後ろを追いかけてくる莉恋を振り返り、営業スマイル

 天馬「ムリ。追いつかれたら、また昔みたいに変なことされそうだから。」
 莉恋「なにを!」
 天馬「じゃ、また明日~。」
 
  莉恋を避けるように公園のフェンスをさっさとよじ登り、向こう側に降り立つ天馬

 莉恋「天馬、本当に・・・あの時はゴメン!」
 天馬「・・・ハ?」
 莉恋「昔さ、練習とか言って、ピアノの下で天馬に何回もキスしたでしょ?
   いくら私たちが子どもで天馬も素直だったとはいえ、好きでもないのに・・・。」

  天馬の表情が曇る

 莉恋「気持ち悪い思い出だよね。」

  深く頭を下げる莉恋

 莉恋「反省してます、ごめんなさい‼」
 天馬「何だよそれ・・・俺が今までどれだけ・・・!」

  ポケットに手を入れ、荒々しく公園の金網を蹴り飛ばす天馬。
  耳に手を当て音にビビる莉恋
 
 莉恋「どうしたら、許してくれるの?」

  再び闇堕ち顏の天馬 莉恋をせせら笑う

 天馬「ここで俺にもう一度キスができたら、許してあげてもいいよ。」
 莉恋(無茶ブリすご! やっぱり、私への恨みは深いみたい!)

  莉恋、覚悟を決めて下唇をかみしめる

 莉恋「・・・目ぇ閉じて。」

  目を閉じる天馬
  金網越しに天馬にキスををしようとする莉恋
  唇が触れる寸前に、驚いた顏で目を開け、莉恋と目が合うと唇を押さえる天馬

 天馬「・・・ムリッ!」
 莉恋「ハァッ⁉ なんでアンタがムリなのよ!」

  天馬は急に顏を赤くして逃げ帰ってしまう

 莉恋「ちょ、待ってよ! 約束はーーー⁉」

  天馬の背中に叫ぶ莉恋 意外な反応に戸惑う

 莉恋(今のフリはからかわれてたってこと? それとも・・・。)

〇天馬が顏を赤くして夜の住宅街を逃げ帰っている

 莉恋・モノローグ(本当の天馬は初心なのか、チャラ男なの? どっちなんだい⁇)