〇高校の音楽室
  天馬に無理やりグランドピアノの下に連れ込まれた莉恋(リコ)
  莉恋の首に腕を回して怪しいムードで胸に引き寄せる天馬(テンマ)

 莉恋「ホントにあの可愛かった天馬なの⁉ 二重人格? それとも双子⁉ 」

  顏を真っ赤にして怒る莉恋
 
 莉恋「ぜんぜん昔と違うじゃないッ!」

  明るい表情から一転、闇堕ちした昏い表情を見せる天馬
  天馬の口元と莉恋の耳のアップ 
  莉恋の耳元で天馬が低い声で囁く

 天馬「オマエのせいだよ、バーカ・・・!」

  莉恋をピアノの下に残して、昏い表情で立ち去る天馬
  ショックを受けて動けない莉恋

 莉恋(昔は可愛かった初心(ウブ)で天使な愛され男子が、私のせいで闇堕ち⁉)


〇高校の校舎

〇莉恋の教室
  前期明けの始業式 
  ダルそうな生徒たち 
  転校生を招き入れる担任教師

 担任教師「それでは自己紹介をお願いします。」
 天馬「ちーす。南栄中から来た雨内 天馬(アマウチ テンマ)でーす。
 前のガッコではアマテンとかー、テンテンって呼ばれてました。」

  (天馬:襟足が長めの茶髪に金のインナーカラー、ピアス、開襟シャツにスクールベスト、チェックのパンツ、銀のウォレットチェーン)

  全身校則違反のチャラい転校生
  ザワザワする教室

  莉恋(低めのポニーテールに黒髪、黒縁眼鏡、紺のブレザー)

  転校生の名前を聞いて、二度見をする莉恋

 天馬「実はわりと人見知りでシャイなんで、気軽に話しかけてくれたら嬉しいでーす。」
 生徒A「人見知りなヤツは、学校にピアスなんかつけてこないでしょ。」

  ドッと笑いが弾ける教室
  天馬をにらむ担任教師
  グットサインで返す天馬

 莉恋(同性同名⁉ そんな偶然ある?)

  目を伏せて青ざめる莉恋 
  天馬が莉恋に冷たい目線を送る


〇莉恋の教室
  天馬の机の周囲に群がる男女の学生たち

 生徒A「そのピアス本物なの?」
 天馬「そう。完全に開いてるけど、触る?」

  天馬の耳たぶに触れて騒ぐ生徒たち 
  チャラ男の天馬はすっかりクラスの人気者
  天馬の手に触れた机の上の消しゴムが床に転がり、莉恋の足元に転がる

 天馬「わりー、取ってもらえる?」

  無言で消しゴムを取り、天馬の目の前に立つ莉恋
  莉恋を見てキョトンとする天馬

 天馬「えっと、誰だっけ?」
 生徒A「初対面でその言い方はナイから!」

  学生たちの笑い声が大きくなる

 莉恋「雪河 莉恋(ユキカワ リコ)・・・です。」

  震える莉恋
  天馬が莉恋を指さして立ちあがる

 天馬「ウソ! やっぱ、あの莉恋なの⁉」
 生徒A「え、知り合い?」
 天馬「生まれた病院から小学校まで一緒の、幼なじみ‼」
 生徒たち「エッモ!」
 天馬「見た目変わったから、全然分かんなかった! 」
 生徒A「雪河さんて、昔はどうだったの?」
 天馬「ギャルだったよね~かなり強めの!」
 生徒たち「今は生徒会の書記なのに、昔はギャルとか意外すぎ!」

  会話に反応できず、暗い表情の莉恋 
  天馬がニッコリと笑顔で笑いかける

 天馬「俺のこと・・・覚えてるよね?」

  薄ら笑いを浮かべる莉恋

 莉恋(忘れるわけないじゃん。アンタの存在そのものが、私の消したい黒歴史なんだから!)

〇(回想)白or黒背景
  小学生の姿の天馬。背が小さく、つぶらな瞳の初心系愛され男子
  金髪ギャル小学生の姿の莉恋

 莉恋・モノローグ(昔の天馬は、背が低くて、つぶらな瞳の初心系愛され男子だった。
  それに対して、私は読モをしていたJSギャル。 
  ジコチューギャルだった昔の私には、誰にも言えない黒歴史がある。)


〇(回想)ピアノ教室のグランドピアノがある空き部屋
  グランドピアノの下に隠れている小学生の天馬と莉恋
  

 莉恋・モノローグ(同じピアノ教室に通っていた幼なじみの天馬は、いつでも私の言いなりだった。
  私はある日、誰もいないピアノ教室の空き部屋に天馬を誘った。)
   
  莉恋が天馬に覆いかぶさる

 莉恋・モノローグ(理由はたんなる好奇心。好きでもないのに、キスの練習相手をさせていた。)

※(回想終わり)


〇莉恋の教室
  ひとり、自分の席で頭を抱える莉恋

 莉恋(そのあと、ママの仕事の都合で転校したのは、タイミング的にラッキーだった。)

  ハッとした顏で、ミュージカルのように両手を広げて立ちあがる莉恋
  
 莉恋(そう、私は過去の過ちをリセットした! ギャルを捨てて改心したのよ!)

  クラスの生徒たちに囲まれてニヤける天馬 
  天馬をにらむ莉恋

 莉恋(なのに、封印していたJSギャルの過去を、秒でみんなにバラすなんて!
 この調子で黒歴史を晒されるようなことになれば、私の慎ましいJK生活も秒で終わる!!)
   
  莉恋の目に炎が宿る

 莉恋(いますぐに、あのチャラ男の羽より軽い口を封じなきゃ!)

 
〇高校の音楽室
  音楽室に天馬を呼び出した莉恋
  天馬はグランドピアノの鍵盤に触れて、意味深に莉恋を見る

 天馬「懐かしいね。」

 莉恋(むしろ、気まずいわ!)

  暗い表情の莉恋
  ニヤニヤしている天馬

 莉恋「天馬にお願いがあるの。」
 天馬「久しぶりの再会なのに、暗くね?
  カッコよくなったとかー、背が伸びたとかさー、俺的にはそーゆーコメントが欲しいのよ。」
 莉恋「とにかくチャラい!」
 天馬「あ、さすがにそれは否定できないなー。」

  ヘラヘラしている天馬
  キレた顏の莉恋
  天馬の胸ぐらを勢いよく掴む莉恋

 天馬「ちょ、暴力反対・・・。」

  穴の開いている有孔ボードに、力任せに天馬の背中を叩きつける莉恋
  もろ手を挙げて降参する天馬

 天馬「見た目は変わったけど、すぐキレるの変わらないね。」
 莉恋「アンタこそ・・・昔は初心で天使な愛され男子だったのに。」

  莉恋のつぶやきに天馬の耳がピクリと動く

 莉恋「ホントにあの可愛かった天馬なの⁉ 二重人格? それとも双子⁉!」

  無言で莉恋の腕を強引につかんだ天馬 
  グランドピアノの下に莉恋を引き入れて覆いかぶさる
  抵抗できない天馬の腕の強さに慄きながら、大きな声で喚く莉恋

 莉恋「ぜんぜん昔と違うじゃないッ‼」

  明るい天馬の表情が曇る 闇堕ちしたような声と表情になる

 天馬「オマエのせいだよ、バーカ・・・!」
  
  ゾクッとする莉恋
    
 天馬「チッ。」

  舌打ちして教室から出て行く天馬
  ピアノの下で震える莉恋

 莉恋「私、天馬に恨まれてるんだ・・・。」


〇暗転。
  うつむいて表情が見えない天馬

 天馬「もう絶対に、逃がさねーから・・・!」