色恋沙汰はどこまでも

 「その腕の傷、俺のせいでっ」

 「ああこれ?ただの掠り傷じゃん……って龍、あんたまさかそれでこんな大暴れしたわけ!?ほんっと信じらんない、バケモンなの?きしょ」

 「凛子さん、本当にすんません」

 掠り傷と言われればそうなのかもしれねえ。でもその綺麗な腕に俺は傷を作らせてしまった。きっと一生消えない、うっすら残るだろう。俺はなんつーことさせちまったんだ。

 「大袈裟すぎだしマジでビビるわ。ネイルチップ飛んでったほうがよっぽど大問題なんですけどー」

 コイツは優しい、絶対に俺を責めない。

 「ほら、さっさと帰るよー、龍」

 傷ついたほうの腕を俺に差し伸べて、どうしようない子供を優しく眺めるような瞳で俺を見て、そんなことされちまったらもう……止めらんねえだろうが。

 「ちょっ!?」

 俺はその手をそっと取って、優しく引き寄せながら腕の傷から流れる血を舐めた。ま、死ぬほど殴られたけどな。

 「ほんっとありえない、汚っ!」

 「俺の唾液が汚いって言うんすか、酷いすね凛子さん」

 「そうじゃなくて違うし。他人の血を舐める行為が汚いって言ってんの」

 「いいんすよ、凛子さんのなら」

 「……龍、あんた1回病院行って検査受けなよ。多分“馬鹿”って診断されるから」

 「そうすか」

 「ちょ、敬語とかやめてよね」

 「俺はもうこれでいくって決めたんで」