色恋沙汰はどこまでも

 それからしばらくこのイカれた一家の世話になることになって、気づけばイカれた一家と一緒に過ごすのが当たり前になっていた。ガキもガキでうぜぇもんはうぜぇけど、なんつーか根っからのうぜぇガキとはまた別のなにかで、なんだかんだ生意気に『龍』と呼ばれるのにも慣れた。

 そんなクソ生意気だったガキが変わり始めたのが中学に入ってからで、他校から大勢のガキ共がいっぺんに集まってくんだ、そりゃ自分のイカれ具合にようやく気づいてもおかしくはねえ。幾分落ち着いた。まあ、元から意味のねえ喧嘩をするタイプでもねーし、弱い奴は守ってやらねーとみたいなヒーロー気質なガキ。

 「ねえ、龍」

 「んだよ」

 「家出るってほんと?お父さんが言ってたけど」

 「ああ、金も貯まったしな」

 「ふーん」

 『なんだよ、寂しいのか?きっしょ』そう言ってやろうとした。ま、このガキが寂しがるタマでもねぇのは知ってんだけど。んで、ガキから放れた言葉に驚愕した──。

 「なんか寂しくなるねー。ま、たまには遊びに来てよ。龍のご飯美味しいし」

 今までコイツの声も笑う顔も腐るほど聞いて腐るほど見てきた。なのに、なんだ?この胸の高鳴りは。コイツ、こんなにも綺麗だったか……?

 「きしょガキ」
 「うざ」

 それから定期的に羽柴家には通った。会うたびに大人びてくガキにモヤモヤが募っていく。そんな時、事件が起きた。

 「おい、それうちのもんだが」
 「ふ、伏見さん!?」
 「あ?この冴えねぇ男が俺の女に手ぇ出しやがったんだよ!!」
 「違うんです!!知らなかったんです!!」