色恋沙汰はどこまでも



 私と日髙が教室へ戻ると、相変わらず自由な時間が流れていた。日髙狙いの女子達があまりにも騒がしくてシャーペンに戻った日髙……というより、私が『戻れ』って命令したから渋々戻った。

 美智瑠達はなんやかんや忙しそうだし、男子に絡まれるのも面倒だから寝たふりでもしとこうかな。そう思って机に伏せようとした時、菊池桃花と黒井さんが戻ってきて、その姿を見た私は一瞬だけ……ほんの一瞬だけ笑みを溢してしまった。なんの笑みだか自分でもわかってないけど、完全に気の緩みだってことは間違えない。

 すぐさま真顔に戻して、何事もなかったかのようにしらこい顔をしてやり過ごそうとした。

 「リンリン」

 そう呼んだのは紛れもなく菊池桃花で、チラッとそっちのほうへ視線を向けると、めちゃくちゃ気まずそうな表情を浮かべてる菊池桃花がいて、そんな顔されたらこっちまで気まずくなるんだけど。

 「なに」

 「さっきは悪かったな、八つ当たりだった」

 「別に?どうでもよすぎて覚えてもない」

 「おいおい、そりゃ酷くねぇか!?リンリン!」

 「ちょっ!?」

 ギャハハと笑いながら私にヘッドロックをかけてくる菊池桃花。マジでこいつもなんなの?ほぼ美智瑠としか関わって来なかった私にとって菊池桃花も日髙聡も特殊?風変わり?すぎて情緒が追いつかない。というか、私を無駄に苛つかせる天才か、おまえらは。

 「あの、菊池さん」

 「んあ?」

 「さっさと離れてくれないかな、鬱陶しい」

 「さすがリンリン!アタシのヘッドロック食らってもびくともしねぇな!」