「お兄様が学生の頃、擬人化文房具に恋して裏切れた。荒れに荒れたお兄様がお母様との喧嘩中、手を上げようとしてそれを止めに入った菊池様の腕に熱湯がかかり、今でもその痕は癒えていない。それ以降、お兄様もお母様も罪悪感から菊池様に気を遣って生活する日々で、それを億劫に感じている……と」
「んだよおめぇ、ストーカーか?きっしょ」
「SS以上の擬人化文房具には、契約成立した時点で契約者様のある程度の情報が予め開示されます」
いつの間にか私の隣に立っている日髙を細目で見上げると、『僕も凛子様のすべてを把握済みです、ドヤ!』と言いたげな顔をして、なんなら褒めてほしそうにしてる図々しい綺麗なご尊顔を容赦なく殴った。
「あーそうかよ。八つ当たりだのなんだのっつって説教してぇだけだろ。んなことおめぇに言われなくても分かってんだよ。あの女のおかげでクソ兄貴の成績が上がったのも行きたい大学に行けたのも、やりてえ仕事に就けたのも……結局はあの女のおかげだってことは分かってんだよ。だけど、あの女のせいでアタシは無駄に気ぃ遣われてダリぃ生活送ってんだよ!!アタシの顔色いちいち伺って……なんなんだよ、あいつら」
“寂しい”たったこの一言が言えなくて、菊池桃花にとってこの一言が何よりも言いたくて、伝えたくて、苦しくて、重いんだろうな。
「私は契約者である菊池様の顔色を伺いながら擬人化文房具としての責務を全うする……なんてことは一切いたしません。だいたい気を遣われてダリぃだのなんだの言うくらいなら、家を出てみてはどうでしょう」
「んだよおめぇ、ストーカーか?きっしょ」
「SS以上の擬人化文房具には、契約成立した時点で契約者様のある程度の情報が予め開示されます」
いつの間にか私の隣に立っている日髙を細目で見上げると、『僕も凛子様のすべてを把握済みです、ドヤ!』と言いたげな顔をして、なんなら褒めてほしそうにしてる図々しい綺麗なご尊顔を容赦なく殴った。
「あーそうかよ。八つ当たりだのなんだのっつって説教してぇだけだろ。んなことおめぇに言われなくても分かってんだよ。あの女のおかげでクソ兄貴の成績が上がったのも行きたい大学に行けたのも、やりてえ仕事に就けたのも……結局はあの女のおかげだってことは分かってんだよ。だけど、あの女のせいでアタシは無駄に気ぃ遣われてダリぃ生活送ってんだよ!!アタシの顔色いちいち伺って……なんなんだよ、あいつら」
“寂しい”たったこの一言が言えなくて、菊池桃花にとってこの一言が何よりも言いたくて、伝えたくて、苦しくて、重いんだろうな。
「私は契約者である菊池様の顔色を伺いながら擬人化文房具としての責務を全うする……なんてことは一切いたしません。だいたい気を遣われてダリぃだのなんだの言うくらいなら、家を出てみてはどうでしょう」



