色恋沙汰はどこまでも

 日髙の大きな手で口を塞がれて声が出せなくて、異常に整ったご尊顔を意味不に接近させてた来た日髙に死ぬほど湧いてくる殺意……と、無駄に心臓が高鳴るこの感じ、うざったい。

 「本当に可愛らしいお方だ。頭のてっぺんから爪先まで余すことなく食べ尽くしたい。僕じゃなきゃイけない体にぃっ!?」

 日髙の爪先を思いっきり踏みつけて容赦なくグリグリしまくった。

 「んんん(コロス)」

 「ハハッ、素直じゃない凛子様も素敵です。ご安心ください、凛子様が素直に心も体も全て僕に委ねて、求めるようになるまでいくらでも待ちますから」

 「んんんん(へんたい)」

 「『だいすき』……ですか。僕も大好きですよ、凛子様。ですが、そんな言葉じゃ足りませんね。僕は凛子様のこと愛しています。まぁ“愛してる”なんて言葉でも足りませんが」

 真っ直ぐな瞳で、嘘偽りのない瞳で、どうしてそんな瞳で私を見つめるの?いや、そんなことはどうだっていい。とにかくこの変態から離れたい、今すぐに!!

 「んんんん(離して)!!」

 「シーー。凛子様、お静かに」

 「んん(はあ)!?」

 「もっと違う方法で口を塞がれたいのであれば、そのご要望にお応えしましょう。濃厚な甘いキスだけで(とど)まれる自信はありませんが……いかがなさいます?凛子様」

 「んんん、んんんんん(おまえ、死にたいの)」

 「『もっと、もっとシて……』ですか。えっちですね、凛子様は」

 こんなやつ投げ飛ばしてボコボコにって、脳内では思ってるのに体が動かない……というより、動きが制限されてなんともならない。こいつ、本当に何者なの?