色恋沙汰はどこまでも

 「まぁ、そんな僕にも弱点はありますよ。凛子様の手の届く範囲にいないと自由に擬人化はできない」

 ほう、なるほど?いいこと聞いちゃったな。ていうか、自ら弱点ゲロるとか馬鹿でしょ、こいつ。まあ、日髙には悪いけど3年間暗闇の中にいてもらうしかない。絶対出てこれないように封印すりゃいいってことでしょ?私の手の届く範囲じゃないところに。で、新しい擬人化文房具と契約して──。

 「ククッ。凛子様は本当に可愛らしいお方だ。ちなみに24時間以上契約した擬人化文房具に触れないと警告音が鳴り響き、擬人化文房具特別調査委員会に通報され、最悪の場合ペナルティ(罰金)を課せられます。ゆえに持ち歩きが推奨されています。そして、一度契約を結んだ擬人化文房具との契約破棄は原則禁止となっており、よほど正当な理由がない限りペナルティ対象になります」

 そんなの聞いてないんですけど?

 「そんなこと知ってたら契約なんてっ」

 「契約書に全て記載されていますよ、凛子様」

 満面の笑みでそう言われてぐうの音も出ない。そもそも契約書をしっかり読まなかった私が全面的に悪いし。

 「ナルホド」

 「あら、どなたかと思ったら日髙さんではありませんか」

 「おや、黒井さんがなぜここに?」

 「「知り合いかよ」」