色恋沙汰はどこまでも

 「ないでしょ、そんなもん」

 「ハハッ」

 「ちょ、ちょっと……!」

 どこからともなく取り出した赤い糸を一瞬で私の左薬指に巻き付け、自身の左薬指にも巻き付けて、満足気にニマァッと満面の笑みを浮かべている変態。

 「見えますか?僕達の赤い糸」

 はあ。見えないほうがおかしいのでは?こんな至近距離で。

 「こんな露骨にただの赤い糸で結ばれても」

 「仮ですよ、仮。まずは物理的に責めようかと思いまして。本来あなたの全身を緊縛して、僕だけを感じて、僕だけしか見えないよう監禁っ」

 「先生、今すぐ警察呼んで。で、これ返品」

 「……ククッ。いいですねえ、その表情。ゾクゾクしちゃうな」

 え、きも、無理。

 「先生、これ“欠 陥 品”。ちゃんと修理出したほうがいいんじゃないですかー」

 「酷いなぁ、凛子様は。そうやって僕を悦ばせておいて放置プレイするおつもりですか?まぁ、それはそれで愉しそうですが」

 ニコニコしながら大きな手で私の頬に触れようとした日髙聡。

 ガシッ!

 私の頬に触れる直前、その大きな手を握って止めたのは──。

 「こらこらぁ、担任の前で濃厚接触はやめよーなー」

 「凛子様に触れるのは僕だけの特権、至極当然のことです」