色恋沙汰はどこまでも

 「マジいらねー。勉強なんざするつもりねえし、いじめなんてダッセェことする奴なんてシバけばよくねえ?な、羽柴!」

 「いや、私に振んないでよ。で、きみは行かなくていいの?」

 「なっ、あっ、えっと、ぼっ、僕はその……後でいい、です」

 「ふーん、そっか」

 顔を真っ赤にしてしどろもどろになってる眼鏡君。熱でもあんじゃないの?

 「オマエ見るからに陰キャくせぇからって……いってぇなぁ!なにすんだよ、羽柴!」

 「ごめん、手が滑った」

 余計なことを口走りそうになった菊池桃花の後頭部をスパンッ!と容赦なくひっ叩いて、何事もなかったかのようにしらこい顔をする私。

 だいたい敵対してる相手でもあるまいし、思っても口に出さないでしょそういうのは。陰キャとか陽キャとかマジでどーもいいじゃん。

 菊池桃花、そういう偏見のないやつだと思ったけど見当違いだったかな。

 「オメェみたいな陰キャには必要だろ、あーいうの。早く取りに行かねえとろくなもん残んねぇぞ」

 プイッとそっぽを向いて私に叩かれた後頭部を擦ってる菊池桃花の心情が、私にはなんとなく伝わる。おそらく思考は似てるんだろうな。

 「ぼっ、僕のこと……心配、してくれてるんですか?」

 「はあん!?心配とかじゃねーし!弱ぇもんは黙って守られてりゃいいんだよ!クソ陰キャが!」

 「ひいっ!?すっ、すみません!」