色恋沙汰はどこまでも

 いつもみたいにヘラヘラニヤニヤするわけでもなく、冗談でも嘘でもなさそうで、ただ真っ直ぐ私の瞳を捉えてくる日髙。その瞳に吸い込まれそうで、全てを奪われそうで思わず目を逸らした。

 「な、なに言ってるのあんた。馬鹿じゃない?さっさと行け」

 「僕はこの恋、この運命を期間限定にするつもりは毛頭ありません。あなたは僕のものです、僕はあなたのものです。これは必然なのですから」

 そう言い残して大人しく戻った日髙を箱にしまった岸本さん。

 「羽柴さん」

 「あ、はい」 

 「すみませんでした」

 「え、ちょ……やめてくださいよ」

 頭を深々下げてくる岸本さん。あの日以降全く会話してないし、多分あの時の謝罪だとは思うけど別に気にしてないし。

 「私、ちゃんと聡に振られました。悔いはないです。私情に巻き込んでしまって申し訳ございませんでした」

 「いえ」

 「では」

 ── 家に帰って、龍が帰ってくる前に荷物をまとめていた。

 「あ、そういえば龍にグランピングのこと言ってないわ、やば」

 脱衣所で持ってく化粧水やら乳液を手にした時、龍の気配がして振り向くと仁王立ちで私をガン見してる。

 「なにがヤバイって?凛子さん」

 「えーっと“報・連・相”忘れた的な?明日クラスのみんなでグランピングなのよ。でも一応保護者の参加もオッケーなやつだし?危ないことなんて何一つ無いっ」