体育祭から1ヶ月後、夏休み直前の金曜の午後。恒例となった日髙の駄々こね、今日は一段と激しい。それもそうだろうね、だって明日明後日グランピングだし?体育祭で活躍した張本人不在とかさすがに不憫すぎて交渉してみたけど、例外は認めないの一点張りであっさり諦めた私。
「凛子様、愛しています。僕と結婚してください」
「もぉ、なに。このくだり何回目?だる」
日髙は私の心を激しく乱してくる、だから嫌だ。これ以上揺さぶってこないでよ、このクソ変態野郎が。そんなクソ変態野郎に毎日毎日愛を囁かれて、時々これでもかってくらい濃厚でねっとりじっとりしたキスを注がれたら、嫌でも意識しちゃうでしょ。こんな気色悪い男でも見た目だけはいいし。
こんなのに恋をしたって意味がない、合理性に欠ける。期間限定の恋なんて、本当に無駄でしかない。私はごくごく普通の恋愛がしたいの、普通の恋愛が。
「凛子様はなぜ僕を受け入れようとしてくださらないのですか?僕はこんなにも愛しているというのに」
「仮に、仮によ。仮に私と日髙が恋仲になったとして、期限が決められた恋愛をするってことになるでしょ。期間限定の恋愛なんてダルいだけでしょって話。なに、毎日毎日お別れのカウントダウンとかするわけ?ドMかよ、生憎そんなドMじゃないんで無理。以上、この話は終わっ……」
「なるほど。凛子様は僕と“永遠の愛を誓いたい”と、そういうことですか。では、本気を出しましょう」
「は?そんなこと言ってないし、擬人化文房具と永遠なんてそんなことできるわけっ……」
「できます」
「は?」
「僕ならできますよ」



