色恋沙汰はどこまでも

 「おーい、羽柴ぁ。もっと気張って走んねぇとお仕置きしんぞ~」

 マイク越しにとんでもない発言をする先生に、女子生徒の甲高い歓声がグランドに響き渡った。やっぱ先生って人気あるだなぁーって……お仕置きとは?ああ、もう!わかったよ、本気で走ればいいんでしょ!?

 「羽柴さん!!頑張れ!!」

 新藤君の声援が私の背中を押してくれた気がして、ギリギリのところで抜いて1位に躍り出た。

 「はぁっ、はぁっ、新藤君!」

 「任せて!」

 新藤君に託したバトン。新藤君はグングン差をつけてぶっちぎりの1位でゴールした。新藤君速っ、ていうかマジ死ぬ。こんなガンダしたのいつぶり?ほんっとしんど。でも、ちょっと清々しいな──。

 体育祭も佳境を迎え、勝敗がはっきりつかないほどの接戦。残されたのはスペシャルズ達のリレー。これで負けたら私達クラスに総合優勝はない。

 「凛子様」

 「なによ」

 「頑張れのちゅーをっ……」

 「するわけないでしょ、さっさと行け」

 「んもぉ、ケチなんですから~」

 「はあ?ってちょっ……」

 屈んで私の頬にキスを落とした日髙に女子達の甲高い悲鳴が轟いた。日髙はルンルンで去っていく。私はもう無の感情、死んだ魚の目をしながら遠くを見つめる。

 「羽柴さん」

 「ん?」

 少しムスッとしながら近寄ってきた新藤君がタオルで私の頬を優しくゴシゴシしてきた。キョトンとしてされるがまま状態の私。

 「このタオルまだ使ってないやつだから安心してね」

 「あ、うん……?」