色恋沙汰はどこまでも

 頬に保冷剤を当てながら片方の手を私の後頭部に回した先生。そのまま優しく引き寄せられると、先生との距離がグッと近くなって唇が重なった。フワッと香る煙草の匂いと柔軟剤の匂い。

 「んっ……!?」

 こういう時、なんで反応できないんだろう。先生の舌が唇を割って入ってきて、ほんのり甘くて煙草の味がした。丁寧だけど濃厚で少し荒っぽいキスに思考が回らなくて力も抜ける。でも、なぜか日髙の顔が浮かんできて、ちょっとした罪悪感みたいなものを感じる。

 「……っ、先生……っ、待って……」

 先生の胸元を叩くとゆっくり離れて、優しい瞳をしながら私の頭を撫でて額に触れるだけのキスを落とした。もう放心状態の私、全く理解が追いつかない。

 「随分と言い聞かせてたつもりだったが悪いな、止まんなかったわ」

 「……あの、どういうことですか」

 「しょ~ゆ~こと」

 「いや、ふざけてる場合ですかこれ」

 「相変わらずクールだねえ~と言いたいところだが、そうでもねぇみたいだな。可愛い顔しやがって、厄介なこって」

 「ちょっ!?」

 私の髪をワシャワシャ撫でて、私の手を保冷剤に宛がうと先生の手が離れてそのまま入り口へ向かい始めた。いやいや、この状況で放置!?

 「悪いな、羽柴。俺ちょいと仕事あるんで~」

 なんて言いながら鼻歌交じりで去って行った先生。

 「……待って、マジで待って……ねえ、普通の学園生活ってどこにあんの?」