色恋沙汰はどこまでも

 私の態度が癪に障ったんだろうな、思いっきりビンタされた。避けようと思えばこんなもん避けれたけど、なんとなく察しがついたから受けることにした。別に同情とかじゃなくて、それでちょっとでも気が晴れるんならよくない?ってやつ。

 「私は!!十数年ずっと聡を見てきたの!!なのに、どうしてぽっと出の、よりによってこんな女に!!返して、聡を返して!!」

 「おいおい、色恋沙汰にうちの生徒を巻き込むのはやめてもらおうか。だいたい八つ当たりだろそれ、いい加減にしていただきたいね。これは問題行動でしょうよ」

 「私は……」

 「あー、もういいんで行ってください」

 「……申し訳ありません、失礼します」

 去っていく岸本さんを追うことはしない先生。

 「甘いなぁ、お前さんは~。おら、保健室行くぞ~」

 「別にこんくらいっ」

 「ダメだ」

 叩かれた頬を見て、その視線は私の瞳を捉えた。なんか先生の雰囲気が違う気がするのは気のせいかな──。

 保健室についてベッドに腰かけると、冷凍庫から保冷剤を出してタオルに包んで私の足元にしゃがんだ先生。必然的に私が先生を少し見下ろす形になるんだけど、なんだろう……変な感じ。先生は保冷剤を持った手をそっと伸ばして私の頬にペタリとつけた。

 「なぁ、羽柴。年の差ってどうだ」

 「え?年の差?」

 「気にするもんか?」

 「あ、ああ……どうなんでしょうね」

 「生徒と教師ってどうだ」

 「別にいいんじゃないですか?」

 「そうか。んじゃ悪いが遠慮なく」

 「え?……先生っ、ん……」